51 ページ3
仕事が終わって会社を出ると、駅に向かう道の途中に、藤ヶ谷さんが立っていた。
「お疲れ」
「藤ヶ谷さん?」
玉森先輩の婚約パーティー以来、初めてまともに対面している。
あの夜、藤ヶ谷さんの前でたくさん泣いたことを思い出して、恥ずかしさのあまり赤面した。
「顔、何でそんなに赤いの?」
「・・・この前、恥ずかしいとこ見られちゃったから、それを思い出して・・・」
「すごかったもんな。鼻水だらだら流して」
「そんなに?」
「嘘」
藤ヶ谷さんの口調はとても優しいけど、基本的に少しだけ意地悪だ。
「・・藤ヶ谷さん、そういえば、どうしてこんなとこにいるんですか?」
藤ヶ谷さんは軽く私を睨んで、それから諦めたように笑った。
「君を待ってたに決まってるでしょ?」
「え?」
「え?じゃないよ。全く」
「・・・怒ってます?」
「悔しいけど、怒ってない」
「・・藤ヶ谷さん?何か今日、変ですね」
「・・ちょっと緊張してんのかな、俺」
「緊張?」
藤ヶ谷さんの言っていることがよくわからなくて、私は彼の言葉の続きを待つ。
「水上さん」
「・・・はい」
「やっぱ、ちゃんと付き合おう。形なんてどうでもいいと思ってたけど、今は、ちゃんとした形が欲しいと思ってる」
「・・・形?」
「酔ってる玉を、介抱したりすんな。もう二度と、仕事以外のことで玉の世話を焼くのはやめて欲しい」
見たこともないほど真剣な表情の藤ヶ谷さんに、私は言葉を失ってしまう。
「・・・・って言う権限が欲しい。水上さんを引き留める理由が欲しいんだ」
「・・・でも、私は・・」
「今は玉を好きなままでいい。いつか、俺だけを好きにさせるから。だから、頷いてよ」
頷いたら、私と藤ヶ谷さんは恋人になる。
そんなこと、許されるんだろうか。
躊躇する私に藤ヶ谷さんが近づいて、うつ向く唇にキスをした。
「既成事実。手を出さないなんて約束、俺は簡単に破れるから」
「・・・手、出された」
「出したよ?明日も出す」
イタズラが成功した子どもみたいに、藤ヶ谷さんは得意気に笑う。
私はもう、忘れなきゃいけないんだ。
玉森先輩への気持ちを消さなければ、私は前に進めないから。
402人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mhnon39(プロフ) - そうだったんですね!分かりました!何度もお話読んでます^^他のお話が読めるまでお返事お待ちしております!頑張ってください^^ (2020年6月10日 20時) (レス) id: f1d97944f4 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - 海さん» 悲しい展開が続いていますが、最後までお付き合いくだされば嬉しいです(*^^*)メッセージありがとうございます。1日に数件しか返信できておらず、パスワードをお送りするのは遅くなると思います(><)申し訳ありませんm(._.)m (2020年6月10日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
海(プロフ) - とっっても切なくて胸が苦しいです!マキさんの書く作品本当に面白くてだいすきです^^メッセージの方も送らせていただいております^^これからも更新楽しみにしています。 (2020年6月9日 20時) (レス) id: f1d97944f4 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - 玲さん» 新堂さんヤバいですよね!女子の嫌なところをグツグツ煮詰めて出来上がったような仕上がり笑!3人を可哀想にしたててるのは私なんですが、可哀想( ;∀;)って思いながらかいてます。結末が見えなくてある意味泣けてきます笑! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - なんか、、新堂さん以外の3人が3人共良い子ですね。そのおかげでなのか新堂さんの悪役さが際立っていてなんとも良いです。現実に居たらぶっ飛ばしてるかもしれませんが(笑)3人は3様の切なさがありますね。誰も悪くない。悪くないから苦しい。こういう展開大好き! (2020年6月4日 20時) (レス) id: b7c4bcac2b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ