三つ編みをほどかれた日(桃色編)・《2》

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先週付けで、私は玉森先輩の専属アシスタントを解除された。


もともとそんな役職はなかったから、先輩に「来週からは通常業務に戻っていいから」って、そう告げられただけだ。



横付けされた机も、元に戻された。


同じ空間にいるのに、会話することさえ今はもうない。





先輩はもうすぐ結婚するし、私には恋人ができた。





この再会に、何の意味もなかったこと、今、はっきりと痛感している。





「玉森くん、仕事終わった？」




新堂さんの声がして、終業時刻から随分時間が経っていることに気づいた。




「・・・やば」



藤ヶ谷さんとの待ち合わせ時間を10分過ぎている。





「・・・お先に失礼します」





振り返ることのない先輩にそう言って、私は急いで会社を出た。





「遅かったな」





会社の前には、待ちくたびれたように街灯に寄りかかっている藤ヶ谷さんがいて、私を見つけると、一瞬だけホッとしたような表情を見せた。









こんな表情を、藤ヶ谷さんにさせたくない。

私がいちばん大切にしなきゃいけない人は、藤ヶ谷さん以外にいないんだから。






「・・・ごめんなさい」





「大丈夫だよ。10分だけだし」





「本当にごめんなさい」





「ん？どうした？」






藤ヶ谷さんの声が、急激に優しさを帯びる。




様子のおかしい私に気づいて、ぽんぽんって、頭を撫でてくれる。





私は甘えたくなって、甘えてもいいのかなって思えて、藤ヶ谷さんの胸に頬を寄せた。





「どうしたんだよ、A」





「・・・藤ヶ谷さん」




「ん？」




「私のことで、不安にならないでね。藤ヶ谷さんにそんな思いさせたくない」





「そっか。そんなこと思ってくれてたんだね」





「・・・え？」





「好きじゃなきゃ、不安になんてならない。Aのことが好きだから、こんなに不安なんだよ。いちいち言わせんなよ、カッコ悪いから」




そう言って藤ヶ谷さんは、包み込むように私の身体を抱き寄せた。





「だけど今日は、ちょっと甘えてくれて嬉しかった」





耳元でそう囁いて、藤ヶ谷さんは嬉しそうに笑った。

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