隣の芝生・我が家の芝生 2

2(二階堂家) ページ7

「あれ〜？おかしいな」


ニカちゃんは頭をポリポリと掻きながら首をかしげる。


「次のお店探そ？」

子どもたちは早々に諦めて、スタスタと歩いていく。

「定休日くらい調べときなよ」

「ごめん」

いつもそうだ。ニカちゃんが張り切るとろくなことがない。

連休の旅行だって、ホテルの予約の日を間違えていて、危うく泊まれないところだった。


仕方なく近所の焼き肉やさんに入る。


「北山だ！」

息子が手を振った先に、同じマンションの北山さん一家が座っていた。

挨拶をして、近くの席に座る。

「違うって言ってんだろ！次はこれを焼くんだよ！」

北山さんのご主人が、息子くんの頭をペチって叩きながら、お肉について熱く語っている。

奥さんがこっちを向いて「煩くてすいません」って頭を下げた。

「いえいえ」って首を振りながら、北山さんのご主人っていいなぁって思う。


何だかすごく「お父さん」って感じがする。


頼もしくて、威厳があって・・。


ぎゃーぎゃーと子どもたちと何を頼むかケンカしているニカちゃんに溜め息をつく。


あなたはもうちょっと威厳を持って？


うちには子どもが3人いるんじゃないかって、時々錯覚してしまう。







焼き肉やさんを出て、マンションまでの道を家族4人で歩く。

公園に差し掛かった時、「カブトムシだ！」ってニカちゃんが大声で叫んだ。

「どこ？！」

子どもたちも大興奮で公園に走っていく。

「カブトムシー出ておいでー！」

大きな木の周りをぐるぐる回りながら3人で叫んでいる。


一番大きな声を出しているのはニカちゃんだった。

私はその光景をベンチに座って眺めながら、何だか幸せを噛み締めていた。


子どもたちより子どもみたいな旦那様だけど、大人になっても少年みたいに無邪気で、私はそんなニカちゃんを好きになったんだ。


「カブトムシ、いなかったよ？」


子どもたちが残念そうにうなだれる。


やっぱり一番残念がっているのはニカちゃんで、私は思わずニカちゃんの頭を撫でた。


「何だよ！」


ニカちゃんが顔を真っ赤にして驚く。


「可愛いなぁって思って」



私の言葉に更に顔を赤くして、ニカちゃんは子どもたちを連れてマンションまで走っていく。



一人取り残された私は、ニカちゃんの照れ方が可笑しくて笑ってしまった。



「A！」




全速力で戻ってきたニカちゃんが「今日、一緒に寝ようね」って囁いた。




やっぱり、ニカちゃんは子どもなんかじゃないかもしれない。

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