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第12話『好きということ』 ページ48

寝ている北山くんを起こさないように部屋を出た。


昨日と同じ通勤服を着て会社に行く勇気は私にはなくて、急いで自宅に戻る。



「あ、朝帰り〜。いけないんだ〜」



「・・・・玉森くん。今日は早いんだね」




エントランスで、会社に出勤する玉森くんと鉢合わせた。


別に何の問題もないのに、なぜだか気まずいと思ってしまう。



「仕事に生きようと思って」



「え?」



「・・・失恋って初めてだから、どんなふうに処理したらいいかわからない」




「・・・玉森くんも・・・・失恋なんかするんだね」




「ほら、そうやって気づかないふりして、俺の気持ちはなかったことにされる」




「じゃあどうしたらいいの?!」





キスされて、動揺しなかったわけがない。



あんなに寂しそうな顔を見せられて、動揺しなかったわけがない。




「どうして土屋さんは、俺のことを好きにならないの?」




「・・・私は、北山くんが好きだから」




「北山さんがいなかったら、俺のこと好きになってた?」




「そんなの、わかんないよ」




「好きだったよ、きっと。てか、今もちょっと好きでしょ?」




「・・・・そんなことない」




「好きだけど、土屋さんは北山さんのこと裏切れない。だから俺のことを振る。そういう性格だもんね」




「勝手に決めつけないで」



「違う?」




私を見下ろして、場違いにふんわり微笑む玉森くん。




私も場違いに、彼のことを綺麗だと思ってしまう。





「次に誰かに告白されたら、ちゃんとお礼を言って、気持ちに応えられなかったことを謝ることにする」




「・・・え?」



「自分の気持ちをなかったことにされることが、こんなに悲しいなんて知らなかった」



「玉森く・・・・



「じゃあね、土屋さん。キスしてごめん」




穏やかな微笑みを残したまま、玉森くんは私を置いて行ってしまった。




振り子みたいに揺れ動く、自分の気持ちに嫌気が差す。




玉森くんとのキスが嫌じゃなかったことが、とても苦しい。

第12話『好きということ』→←第11話『愛しい君』(北山くん)



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マキ(プロフ) - アニカさん» お久しぶりです。ちまちまとしか書けなくてなかなか筆が進みませんが、どちらとゴールするのか私も知らなくて困っています!笑どうにか完結したものをお届けできるように頑張ります(*^^*) (2021年12月12日 23時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - みゆたままさん» 頑張れるのか、後輩玉森!笑!北山さんと別れる理由もなさ過ぎて、どうしようかと思案してます( ゚Д゚) (2021年12月12日 22時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
アニカ(プロフ) - お久しぶりです。暮れに来て、またまた素敵な切ないお話!玉森くんが本当に玉森くんで(笑)食べちゃいたいほど可愛い!みっくんも不器用に優しくて泣けますね。やっぱりマキさんの作品が読めると、毎日HAPPYになります( ◜‿◝ )♡ (2021年12月8日 3時) (レス) @page1 id: c2540d2c8a (このIDを非表示/違反報告)
みゆたまま - 頑張れーー!!後輩たまもりーーー!! (2021年12月6日 0時) (レス) @page44 id: d71bf58877 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - すいさん» B型コンビのケンカ芸私も大好きです!玉森くんの飄々とした佇まいが好きなので、そういう雰囲気が少しでも出せればと思っています(^-^) (2021年11月14日 2時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2021年8月1日 23時

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