第5話『焼き肉の乱』 ページ19
「土屋さん、この資料の入力の続きやってもらえないかな？」
同期の女の子が、焦った様子で、資料の束を差しだした。
「え？」
「私、実家暮らしなんだけど、母親から連絡あって、何か体調悪いらしいの。心配だから、早く帰ってあげたくて」
「それは心配だね。もちろん代わりにやっておくよ」
「本当に？ありがとう！」
彼女は目を輝かせて、終業時刻と共に帰って行った。
「あの人のお母さんの体調が悪くなるの、今月3回目ですよ？」
いつの間にか私の背後に立っていた玉森くんが、苦々しげにそう言った。
「びっくりしたぁ。急に話しかけないでよ」
「じゃあ今から話しかけますね。いいですか？」
「・・・何？」
「土屋さん、残業押し付けられてることに気づいてます？」
「別に押し付けられてない」
「土屋さんって、バカなんですね」
「どうして？」
「俺、お人好しはバカだと思ってるんで」
「・・・じゃあそう思ってればいいじゃん」
「手伝います」
「大丈夫、一人でできる」
「お人好しな上に強情か。救いようないな」
「あなたに救ってもらわなくて結構です」
玉森くんに言われなくても、そんなの私がいちばんよくわかってる。
私は押しにめっぽう弱くて、理不尽なことも、なんだかんだ受け入れてしまう。
「ちょっと待って？あなたもつけこんでるじゃない！私が断れない性格なことがわかってて、うちに転がり込んできたんでしょ？」
私が興奮気味にそう言っても、玉森くんは涼しい顔で私を見下ろしていた。
「転がり込むって？」
勢いあまって、私が落としてしまった資料を拾いながら、北山くんが怪訝そうな顔をする。
「え？私そんなこと言った？」
「言ったじゃん。今」
「あ・・・あぁ！玉森くんちの猫が、私の家に転がり込んでたって話・・・かな？」
「ふ〜ん。つーか、まだ帰んない？残業？」
「私？うん、もう少しかかりそう」
「これ、入力するだけ？」
「うん」
「貸せ。手伝う」
「いいよ！自分で・・・
「早く終わらせて焼き肉行こーぜ？」
「・・・え？」
「お前好きって言ってたじゃん」
北山くんはパソコンに顔を向けたまま、何でもないことのようにそう言った。
その一言が、私にとっては大事件で、脳内では花火が何千発も打ち上げられているというのに。
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マキ(プロフ) - アニカさん» お久しぶりです。ちまちまとしか書けなくてなかなか筆が進みませんが、どちらとゴールするのか私も知らなくて困っています！笑どうにか完結したものをお届けできるように頑張ります(*^^*) (2021年12月12日 23時) (
レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - みゆたままさん» 頑張れるのか、後輩玉森！笑！北山さんと別れる理由もなさ過ぎて、どうしようかと思案してます( ﾟДﾟ) (2021年12月12日 22時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
アニカ(プロフ) - お久しぶりです。暮れに来て、またまた素敵な切ないお話！玉森くんが本当に玉森くんで(笑)食べちゃいたいほど可愛い！みっくんも不器用に優しくて泣けますね。やっぱりマキさんの作品が読めると、毎日HAPPYになります( ◜‿◝ )♡ (2021年12月8日 3時) (レス) @page1 id: c2540d2c8a (このIDを非表示/違反報告)
みゆたまま - 頑張れーー！！後輩たまもりーーー！！ (2021年12月6日 0時) (レス) @page44 id: d71bf58877 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - すいさん» B型コンビのケンカ芸私も大好きです！玉森くんの飄々とした佇まいが好きなので、そういう雰囲気が少しでも出せればと思っています(^-^) (2021年11月14日 2時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
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