親切な後輩

第4話『初めての気持ち』 ページ14

「土屋、今日の夜暇？」




休憩室の自販機で、飲み物を買っている私に北山くんがそう話しかけてきた。



「夜？」



「同期でメシ食いに行こーぜ？しばらくみんなで行ってないだろ？」



「うん。・・・あ、でも・・・



「ん？何か用事ある？」



玉森くんは、夜ご飯どうするかな。



うちに彼が住み着いて以来、私が部屋をあけるのは初めてだ。



「・・・ううん。大丈夫！行く」



「よかった。じゃあ後でな」




玉森くんのことなんか気にしなくていい。



住む場所が見つかるまで、雨風をしのげる場所を提供してあげているだけだ。



それより・・・そんなことより、今日の食事会で、私は北山くんとの距離を縮めることができるだろうか。




人懐っこい北山くんは、先輩後輩関わらず、誰からも好かれていて、同期の中じゃ全然目立たない私にさえ、こうやって親しげに話しかけてくれる。




だから私も好きになって、




どんどんどんどん好きになって、





こんなふうにうじうじと想いを伝えられないまま、片想いの記録を更新したりしている。




だけど、気持ちを伝える勇気なんて、少しも湧いてくる気配はない。





だって、私だったら選ばないから。




たくさんの女の子の中から、私は私を選ばない。

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