第1話『降って湧いた災難』 ページ5
「無理だよ？」
「何で？」
「よく真顔で何で？って返せるね。自分のヤバさをわかってる？」
「だって居候させてもらってた友達が、彼女と暮らすから出てけって」
「出ていけばいいじゃない。新しい部屋を借りなさい」
「やだ。お金ないし。俺、就職したばっかですよ？」
「知らないよ。あ、北山くんに頼んでみたら？あなたの直属の先輩なんだし」
「テンションの高低差半端ないでしょ」
「それは君が合わせたら？」
「却下」
「あのね、そんなワガママばっか言える立場じゃないでしょ？」
こんこんと説教をたれようとする私の手から、玉森くんは鞄を奪い取った。
「誘拐しちゃった」
「ねぇ、何してるの？」
「返して欲しい？」
「返して？」
「一緒に住んでくれる？」
「やだ」
「じゃあ、俺もやだ」
「玉森くん！いい加減に・・・・
本気で怒ろうとした私の額を、大きな雨粒が濡らした。
「雨？」
そう呟いた瞬間、雨は一気に土砂降りになる。
「夕立だ」
玉森くんに手を引かれて、近くのお店の軒下に入った。
「あーあ。びしょ濡れ」
「すぐに止むかな？」
「さぁ。どうだろ」
目に入った滴に顔をしかめながら、玉森くんは空を見上げる。
そのあまりにも綺麗な横顔に、思わず見とれてしまった。
「あんまり見ないでよ。恥ずかしいから」
全然恥ずかしくなさそうに、玉森くんはそう言って笑った。
「土屋さん」
「ん？」
「何か寒い。悪寒がする」
「え？大丈夫？」
「早くおうちに帰ろう？シャワー浴びなきゃ凍えて死んじゃうよ」
捨てられた子犬みたいな悲しい瞳で、玉森くんは私を見上げる。
「・・でも・・
「寒い〜。寒いよ、土屋さん」
今日の夕立みたいに、降って湧いた災難。
どうしようもなく、私を舐めているらしい後輩が、信じられないくらい美しい容姿をしていることに、私はこの時、ようやく気づいた。
第2話『好きじゃないから好き』→←第1話『降って湧いた災難』
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マキ(プロフ) - アニカさん» お久しぶりです。ちまちまとしか書けなくてなかなか筆が進みませんが、どちらとゴールするのか私も知らなくて困っています！笑どうにか完結したものをお届けできるように頑張ります(*^^*) (2021年12月12日 23時) (
レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - みゆたままさん» 頑張れるのか、後輩玉森！笑！北山さんと別れる理由もなさ過ぎて、どうしようかと思案してます( ﾟДﾟ) (2021年12月12日 22時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
アニカ(プロフ) - お久しぶりです。暮れに来て、またまた素敵な切ないお話！玉森くんが本当に玉森くんで(笑)食べちゃいたいほど可愛い！みっくんも不器用に優しくて泣けますね。やっぱりマキさんの作品が読めると、毎日HAPPYになります( ◜‿◝ )♡ (2021年12月8日 3時) (レス) @page1 id: c2540d2c8a (このIDを非表示/違反報告)
みゆたまま - 頑張れーー！！後輩たまもりーーー！！ (2021年12月6日 0時) (レス) @page44 id: d71bf58877 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - すいさん» B型コンビのケンカ芸私も大好きです！玉森くんの飄々とした佇まいが好きなので、そういう雰囲気が少しでも出せればと思っています(^-^) (2021年11月14日 2時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
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