第10話『恋心』 ページ38
「よし!好きな味選べ」
得意気に北山くんがそう言うから、私は呆れながらもたくさんあるインスタントラーメンから、好きな味を物色する。
「北山くんが手作りしてくれるんだと思ってた」
「ただラーメン茹でるだけじゃねーから。野菜炒めて乗っけるし」
「種類すごいね。どれにすればいいかわかんない」
「このスーパーが、いちばん品揃えいいんだよ」
会社帰りに、近所のスーパーに寄った。
北山くんの部屋に行くのは、今日が初めてだ。
「最寄り駅一緒っていいね。私もこのスーパーによく来るの。生活圏同じなんだなぁ」
「何しみじみしてんだ。早く選べよ」
「あ、ちょっと待って」
急かす北山くんに焦っていると、後ろから肩を叩かれた。
まさか・・・・玉森くん?
恐る恐る振り返ると、そこにいたのは、同期の佐藤さんだった。
「やっぱり、土屋さんだ」
「・・・佐藤さん!」
「どうして土屋さんが北山くんと一緒にいるの?偶然?」
平静を装う佐藤さんの顔がひきつっている。
・・・そうだ。
佐藤さんは、多分北山くんのことが好きなんだ。
この前の同期会でそのことに気づいていたのに、自分の気持ちが通じた嬉しさですっかり忘れてしまっていた。
「おぉ!佐藤、お前もこの辺に住んでんの?」
「・・・うん」
「そりゃそーか。便利だもんな。会社にも近いし」
「・・・北山くん」
「ん?」
「どうして土屋さんと買い物してるの?偶然会ったの?」
「何で?偶然じゃないけど」
「え?」
「俺たち付き合ってっから」
あっけらかんと、北山くんはそう言った。
隠すことなく、私たちの関係を明言してくれたことが嬉しいはずなのに、佐藤さんの気持ちを知っている私は、いたたまれなくなってしまう。
「・・・付き合ってる?どうして、北山くんと土屋さんが?」
とまどう佐藤さんの、目の縁がどんどん赤みを帯びていく。
「そんなん、好きだからに決まってんじゃん。土屋、ラーメン選んだ?」
「・・・うん」
「よし!じゃあ行こうぜ。腹減った〜。佐藤、またな」
私も佐藤さんに会釈をして、レジに向かう北山くんを追いかけた。
どうしよう。
佐藤さんの好きな人を、私はかすめとるように奪ったのかもしれない。
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マキ(プロフ) - アニカさん» お久しぶりです。ちまちまとしか書けなくてなかなか筆が進みませんが、どちらとゴールするのか私も知らなくて困っています!笑どうにか完結したものをお届けできるように頑張ります(*^^*) (2021年12月12日 23時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - みゆたままさん» 頑張れるのか、後輩玉森!笑!北山さんと別れる理由もなさ過ぎて、どうしようかと思案してます( ゚Д゚) (2021年12月12日 22時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
アニカ(プロフ) - お久しぶりです。暮れに来て、またまた素敵な切ないお話!玉森くんが本当に玉森くんで(笑)食べちゃいたいほど可愛い!みっくんも不器用に優しくて泣けますね。やっぱりマキさんの作品が読めると、毎日HAPPYになります( ◜‿◝ )♡ (2021年12月8日 3時) (レス) @page1 id: c2540d2c8a (このIDを非表示/違反報告)
みゆたまま - 頑張れーー!!後輩たまもりーーー!! (2021年12月6日 0時) (レス) @page44 id: d71bf58877 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - すいさん» B型コンビのケンカ芸私も大好きです!玉森くんの飄々とした佇まいが好きなので、そういう雰囲気が少しでも出せればと思っています(^-^) (2021年11月14日 2時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
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