第9話『優しい』 ページ35
玉森くんが帰った後、北山くんは急に無口になって、私と目も合わせてくれなかった。
「炒飯下げたから怒ってるの?」
チラッと私に視線を送って、反抗期の子どもみたいに、不機嫌そうに足を投げ出す。
「・・玉森に警戒心なさすぎじゃないか?」
「え?」
「どうしてそんなに簡単に玉森を家の中に入れるんだよ」
「だって勝手に入ってくるもん」
「断ればいいだろ」
「私の言うことなんて全然聞かない」
「全力で止めたのかよ」
「どうして私が怒られるの?」
北山くんが言いたいことはわかってる。
玉森くんに毅然とした態度を取り続けられない私が悪い。
「お前、玉森のことどう思ってる?」
「迷惑な後輩」
「迷惑な後輩の世話焼いてどうすんだよ」
「・・・だって、お腹すいたってずっと連呼されたら、無下にできないんだもん」
「お前が迷惑って思ってる時点で、断らなきゃダメだろ。そんなん優しいって言わないよ」
「・・・・わかってる」
「わかってない」
「次は断るから」
「断れるかなぁ?」
「・・・頑張る」
「よし!じゃあ、炒飯くれよ。残したらもったいねーだろ。食べ物粗末にすんなよ」
「あなたたちがうるさいからでしょ。ちょっと待ってて、温めなおすから」
口も利かないくらいのケンカに発展するのかと思っていたのに、あっさりと終息した初めての北山くんとの諍い。
心の広い人だなぁと思う。
ケンカを終わらせるきっかけを、ちゃんとつくってくれた。
「土屋!」
「ん?」
「ヤキモチだから」
「え?」
「玉森のことで、あーだこーだ俺が言ってんの」
「・・・今、心の広い人だと思ったのに」
「広くてたまるか!」
足先から頭のてっぺんまで、じんわりと体温が上がっていくような気がする。
ヤキモチ。
私に、そんな感情を持ってくれるんだ。
「ありがと」
「は?」
「ヤキモチ、嬉しいです」
「ヤキモチ焼かれて嬉しがんなよ。危ねーヤツじゃん」
憎まれ口も、ニコニコして聞いてしまう。
そんな私を見て、彼は不気味そうに顔をしかめていたけれど。
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マキ(プロフ) - アニカさん» お久しぶりです。ちまちまとしか書けなくてなかなか筆が進みませんが、どちらとゴールするのか私も知らなくて困っています!笑どうにか完結したものをお届けできるように頑張ります(*^^*) (2021年12月12日 23時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - みゆたままさん» 頑張れるのか、後輩玉森!笑!北山さんと別れる理由もなさ過ぎて、どうしようかと思案してます( ゚Д゚) (2021年12月12日 22時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
アニカ(プロフ) - お久しぶりです。暮れに来て、またまた素敵な切ないお話!玉森くんが本当に玉森くんで(笑)食べちゃいたいほど可愛い!みっくんも不器用に優しくて泣けますね。やっぱりマキさんの作品が読めると、毎日HAPPYになります( ◜‿◝ )♡ (2021年12月8日 3時) (レス) @page1 id: c2540d2c8a (このIDを非表示/違反報告)
みゆたまま - 頑張れーー!!後輩たまもりーーー!! (2021年12月6日 0時) (レス) @page44 id: d71bf58877 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - すいさん» B型コンビのケンカ芸私も大好きです!玉森くんの飄々とした佇まいが好きなので、そういう雰囲気が少しでも出せればと思っています(^-^) (2021年11月14日 2時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
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