検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:30,786 hit

1 ページ1

「どうしたの?さっきから携帯ばっか見て」


「あ、ごめんごめん」



同期のミカちゃんに注意された私は、慌てて携帯をしまう。



「・・新しい部屋を探してて」



「引っ越すの?」



「うん。やっぱ遠くて、会社」



「何でそんな遠くに住んでるわけ?」



「だってこの辺家賃高いじゃん!私、借りてる奨学金もあるから、お金ないもん」



「ふ〜ん。大変だね」




「本当に大変だよ〜」




毎日頭の中はお金のことで頭がいっぱい。

手取額を地の底まで引き下げる国民の義務である納税を、こんなに呪っているのは私だけかもしれない。





「あ、ルームシェアってのはどう?」



「ルームシェア?」



「私の友達にさ、一緒に住んでくれる人を探してる子がいるのよ」



「へぇ。場所はどこ?」



「会社のすぐ近く。駅前のマンションの最上階」



「ちょっと〜何の冗談?家賃折半だとしても私に払えるわけないじゃん」



「タダだよ?」



「え?」



「だから、タダ」

 

「ええ〜〜??!!」



「親からのプレゼントなんだって。だから持ち家?でも、とにかく部屋が広いみたいで、一人で暮らすのが寂しいらしいの」



「・・・そんな漫画みたいな生活してる人がいるんだねぇ。想像できないよ」



「で?どうする?」



「こんな見ず知らずの私が行っていいものなの?」



「うん大丈夫。せんちゃんが出してる条件に、Aはぴったりだから」



「条件?」



「家事を教えてくれて、騒がしくなくて、あんまり怒ったりしない人」



「家事?」



「独り暮らし初めてなんだって」



「箱入りじゃん」



「うん。だからちょっと不思議な感じの人だよ」





不思議ちゃんかぁ。





その人がどんなに突拍子のない人でも、背に腹は変えられない。



「その、せんちゃん?って人に、私のこと話してもらってもいい?」




「いいよ」




家賃分のお金が浮くのかぁ。



「ありがたい!」



こんな夢みたいな話があるだろうか。


私はまだ見ぬせんちゃんを、手を合わせて心の底から拝んだ。

2→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (171 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
447人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

リリ(プロフ) - マキさんの作品、だいすきです!更新ありがとうございます (2022年3月13日 20時) (レス) id: 195e0203d3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2021年1月15日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。