10(北山さん) ページ10
「え〜！？なにそれ。最低じゃない？」
甘ったるそうな飲み物を口に運びながら、千賀は嫌そうに顔をしかめた。
「最低？何が？」
「だって彼女でもない人と同じベッドで寝るなんて考えられないよ」
「何もしてない」
「本当かなぁ？」
「疑ってんじゃねーよ」
高校の同級生だった千賀とは、いまだに時々会って、近況を報告している。
気に食わないのは、千賀の都合にいつも付き合わされることだ。
今日だって、会社の昼休みの時間に呼び出されてOLみたいなランチを食べたりしている。
「前から聞きたかったんだけど、お前の仕事は何なんだよ」
「芸術家？」
「は？」
「絵を描いてる」
「誰かお前の絵を買ってくれる人がいるわけ？」
「絵を買って欲しくて描いてるわけじゃない。描きたいから描いてるの」
「どうやって生活してんだよ」
「有り余る資産があるからね」
「ちっ。聞かなきゃよかった」
「あ！舌打ちしないで。下品だから」
高校時代、”ロイヤル”というあだ名で呼ばれていた千賀の実家は、地元で知らない人はいないような名家だった。
「そういえばさ、俺もルームシェアしてるんだ」
「ふーん。友達？」
「あんまりよく知らない女の子」
「は？！お前、たった今俺に最低って言わなかったか？」
「ミツと一緒にしないでよ！俺は部屋はもちろん別にしてるし、バスルームだって分けてるんだから」
「つーか、何でわざわざルームシェアしてんの？」
「親から貰ったマンションが広すぎてさ。一人じゃ怖いから」
「マンションって貰うものなんだな」
「貰わないの？」
「俺んちの親はくれないかな」
「そうなんだ」
今までどうやって生きてきたのかわからないほど純粋で単純な千賀。
同居している相手が、悪い女じゃないならいいなって、そんなことを考える。
「ミツも寂しいんでしょ？」
「は？」
「寂しいから、女の子と一緒にすんでるんでしょ？まだ、花織ちゃんのこと忘れられてないんだね」
「・・・・そんなんじゃねーよ」
なめた量しか入っていないパスタを一気に食べる。
それが肯定の返事になってしまうことに気づきながらも、”違う”と言葉にすることはできなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 949人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みき(プロフ) - マキさんご無沙汰してます。そして今頃すみません。全てのシーン私の抱いているみっくんでした。すごいなぁ〜。こんな素敵なお話を描けるマキさんは本当に優しい人なのだろう。私ではないけど彼女の私は沢山幸せをもらいました。さびしいです。ありがとうございました。 (2021年11月1日 15時) (
レス) @page49 id: e2d6b3aa5d (このIDを非表示/違反報告)
わわか(プロフ) - １つずつ終わっていくのがすごく寂しいです。マキさんの言葉、物語がとてもとても好きでした！他のメンバーの話も楽しみであり、終わってしまうのがさみしくもあり。最後までしっかり読ませていただきます！ (2021年5月28日 17時) (レス) id: 3db566fc35 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 北山くんが主人公のお話、終わっちゃいました。私の書く北山くんが、北山くんをお好きな皆様にも温かく受け入れてもらえて嬉しかったです！ありがとうございました(*^^*) (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちはるさん» 元は横尾さんがお好きだったんですね(*^^*)北山くんと横尾さんの関係性がとても好きなので、二人のお話が書けて私も楽しかったです！身長差もそうですけど、情熱と冷静みたいな対極な二人がいいなぁと思っています＼(^^)／ (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
ちい★(プロフ) - 終わっちゃって寂しいです…。マキさんの書くお話は苦しくなったり幸せになったり…リアルで大好きです！！！読み返してきます★ (2021年5月16日 11時) (レス) id: aba16733a8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
