46 ページ46
フローリングに押し付けられた肩が、ひんやりと冷たい。
毎日同じベッドで眠っていたけど、北山さんに見下ろされるのは初めてだ。
「すごい眺め」
「・・え?」
「お前は涙ぐんでるし、部屋は散らかってるし」
「・・・散らかしたのは北山さんです」
「そっか」
少し鼻にかかったいつもより低い声が、私の耳をくすぐる。
「・・・・北山さん」
「ん?」
「・・・・月城さんは?」
「俺の手を借りずに、自分で解決したいってさ。本社のコンプライアンス部に電話するって。店長にもそう伝えるって言ってた」
「・・・・私、すごくお節介でしたね」
「先回りして人の気持ち読もうとするからだろ?お前には百万年早いんだよ」
「・・・ごめんなさい」
「でも、花織は感謝してたよ。くすぶってた気持ちに蹴りがついたって」
「・・・・やっぱり・・・」
「は?」
「やっぱり月城さんに、私は一生敵わない。こんな余計なことしかしない女に感謝するなんて、そんなの私には無理だもん」
「お前が花織に敵うかよ。花織はいい女なんだよ」
「・・・だから、
「だけど、しょーがねーじゃん。俺が好きなのはお前なんだから。余計なことしかしないわ、ケーキ買ってきてんのにチョコレートがいいって騒ぐわ、勝手に出ていこうとするわ、何なんだよお前」
私の両肩の上についた北山さんの手に、大粒の涙が落ちる。
「・・・何でこんなに好きなんだろう」
思わず、北山さんの頬に手を添えた。
添えた手に重なる北山さんの手のひらが、驚くほど熱い。
「北山さんだって同じです。急に現れて、あっという間に私の気持ちを拐ってこんなにも好きにさせるなんて。どうやったら忘れられるんだろう、忘れるのに何年かかるんだろうって、怖くて怖くて仕方なかった」
脆いと思っていた。
わけもわからないまま始まったから。
北山さんの私への気持ちがこんなにも確かなものだったのだと、どうして信じることができなかったんだろう。
「北山さん、ごめんなさい」
「・・・・信じて?俺のこと、信じていいから」
頷いて、静寂の中、北山さんと見つめ合った。
永遠みたいに長い時間、北山さんは、私だけを見つめていた。
949人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みき(プロフ) - マキさんご無沙汰してます。そして今頃すみません。全てのシーン私の抱いているみっくんでした。すごいなぁ〜。こんな素敵なお話を描けるマキさんは本当に優しい人なのだろう。私ではないけど彼女の私は沢山幸せをもらいました。さびしいです。ありがとうございました。 (2021年11月1日 15時) (レス) @page49 id: e2d6b3aa5d (このIDを非表示/違反報告)
わわか(プロフ) - 1つずつ終わっていくのがすごく寂しいです。マキさんの言葉、物語がとてもとても好きでした!他のメンバーの話も楽しみであり、終わってしまうのがさみしくもあり。最後までしっかり読ませていただきます! (2021年5月28日 17時) (レス) id: 3db566fc35 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 北山くんが主人公のお話、終わっちゃいました。私の書く北山くんが、北山くんをお好きな皆様にも温かく受け入れてもらえて嬉しかったです!ありがとうございました(*^^*) (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちはるさん» 元は横尾さんがお好きだったんですね(*^^*)北山くんと横尾さんの関係性がとても好きなので、二人のお話が書けて私も楽しかったです!身長差もそうですけど、情熱と冷静みたいな対極な二人がいいなぁと思っています\(^^)/ (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
ちい★(プロフ) - 終わっちゃって寂しいです…。マキさんの書くお話は苦しくなったり幸せになったり…リアルで大好きです!!!読み返してきます★ (2021年5月16日 11時) (レス) id: aba16733a8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ