チョコレートと花束を(Ki)

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「なぁにぃ？元気ないじゃない。彼氏が金持ちでもそんなに辛気臭い顔できるんだ」



お客さんが途切れたレジで溜め息をついている私を見て、葛西さんはそう言った。



「お金持ちかなんて知らないですよ。辛気臭い顔は元からです」



「彼氏いくつ？」




「えっと・・・35？だったかな」




「島谷ちゃんより随分年上じゃない。話合うの？」



「どうかなぁ。でも、一緒にいて楽しいです」



「やだ！惚気ないでよ。ねぇ、月城さん聞いて！島谷ちゃんが彼氏の自慢ばっかするのよ！」




わざわざ遠くにいる月城さんに葛西さんが声をかけるから、私は慌てて葛西さんの口をふさいだ。




「え？なんですか？」





ニコニコと感じの良い笑顔で、月城さんが私たちに駆け寄ってくる。




「ちょっと！苦しいじゃない」



私の手を払い除けて、葛西さんはレジカウンターの外に身を乗り出す。




「年上の彼氏と毎日ラブラブなんだって」



「そんなこと言ってません」



「島谷さんの彼、年上なの？」



「35歳だって」




私の代わりに、葛西さんが勝手に答える。




「35？私と同じだ」




月城さんの言葉に、心臓がドクンと跳ねる。




「月城さん、35なの？見えないわね〜。まだ20代だと思ってた」



「え？嬉しいな。ありがとうございます」




葛西さんの軽口にさえ、月城さんは笑顔を絶やさない。




こんな素敵な人と一緒にいて、北山さんが幸せじゃなかったわけがない。




別れたのだって、きっと、少し気持ちがすれ違ってしまっただけのことだ。





その証拠に、月城さんは、婚約を解消してしまうくらい、北山さんと別れたことを後悔している。





私・・・・ズルい。





二人を再会させてあげられるのは私だけなのに、そうすることが、すごく怖い。

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