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「・・月城さん、大丈夫ですか?あったかい飲み物とか頼まなくていいですか?」
お店に入っても、ずっと動揺の収まらない月城さんにそう尋ねる。
「・・・大丈夫。ごめん。驚かせちゃったね」
「・・・いえ」
月城さんは店員さんから受け取ったお水を飲んで、深く呼吸をした。
「向かい側の歩道に、サラリーマンが二人歩いてたの見た?」
「・・はい」
「前に付き合ってた人だったから、びっくりしちゃった」
「どっちの人ですか?」
「小柄な方。紺色のスーツ着てた人」
今度は、私が動揺する番。
「・・・・・どれくらいお付き合いしてた方なんですか?」
「大学生の頃から10年以上。10年も付き合って、結局別れちゃった。きっと私が悪いんだと思う。30を過ぎた頃から、結婚を意識しすぎちゃったみたい」
「・・・・今でも、好きなんですか?」
私の言葉に、月城さんはしばらく何も答えなかった。
「・・ごめんなさい!立ち入ったことを聞いちゃいました」
「ううん。そんなことないよ。私、実はね、彼の後にお付き合いした人と、婚約までしたの。だけどダメだった。忘れられない人がいること、相手に隠せてなくて・・・結局婚約破棄になったの」
自嘲気味に笑う、月城さんの目の縁が赤い。
時々北山さんに見え隠れする昔の彼女は、全部、月城さんだったんだ。
「みっくん、全然変わってなかったな」
「・・みっくん?」
「あ、彼のこと。ずっとそう呼んでたの」
大きな衝撃が、私の胸を貫く。
私の好きな人と、私の好きな友達は、過去に、恋人同士だったんだ。
月城さんの今の気持ちを、北山さんは知っているんだろうか。
「・・・会わないんですか?」
「会えないよ。別れを切り出したのは私なの。今更、そんなことできない。それにね・・・会うのがすっごく怖いんだ」
「怖い?」
「うん。これ以上、みっくんのことを好きになるのが怖いの」
北山さんも、同じように思っているのではないだろうか。
月城さんと会うのが怖いって。
これ以上、彼女のことを好きになるのが怖いって・・・。
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みき(プロフ) - マキさんご無沙汰してます。そして今頃すみません。全てのシーン私の抱いているみっくんでした。すごいなぁ〜。こんな素敵なお話を描けるマキさんは本当に優しい人なのだろう。私ではないけど彼女の私は沢山幸せをもらいました。さびしいです。ありがとうございました。 (2021年11月1日 15時) (レス) @page49 id: e2d6b3aa5d (このIDを非表示/違反報告)
わわか(プロフ) - 1つずつ終わっていくのがすごく寂しいです。マキさんの言葉、物語がとてもとても好きでした!他のメンバーの話も楽しみであり、終わってしまうのがさみしくもあり。最後までしっかり読ませていただきます! (2021年5月28日 17時) (レス) id: 3db566fc35 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 北山くんが主人公のお話、終わっちゃいました。私の書く北山くんが、北山くんをお好きな皆様にも温かく受け入れてもらえて嬉しかったです!ありがとうございました(*^^*) (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちはるさん» 元は横尾さんがお好きだったんですね(*^^*)北山くんと横尾さんの関係性がとても好きなので、二人のお話が書けて私も楽しかったです!身長差もそうですけど、情熱と冷静みたいな対極な二人がいいなぁと思っています\(^^)/ (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
ちい★(プロフ) - 終わっちゃって寂しいです…。マキさんの書くお話は苦しくなったり幸せになったり…リアルで大好きです!!!読み返してきます★ (2021年5月16日 11時) (レス) id: aba16733a8 (このIDを非表示/違反報告)
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