40 2004年・7月(月城さん) ページ40
その寝顔は、いつ見ても気持ちよさそうで、私は無意識に、彼の寝顔をノートに描き写していた。
大学一年生の夏。
蝉の声に溺れてしまいそうな騒音の中でも、彼はおかまいなしに眠っていた。
「ねぇ！・・・・ねぇってば！」
講義が終わって、廊下に出ようとした時、誰かを呼んでいる声が、背中越しに聞こえてきた。
私が呼ばれているとは思わず、そのまま歩き続けていると、ガシッと肩を掴まれた。
驚きすぎて、その場に固まってしまう。
「月城さん？でしょ？」
「え？」
振り返った先には、いつもの寝顔の彼。
「月城さん？」
「・・・・はい」
「これ、さっき落としたよ？」
彼が持ち上げたのは、私が使っている大学ノート。
ノートの中身を思い返して、身体中の血の気が引いた。
「・・・ごめんなさい」
奪い取るように、彼の手にあるノートを掴む。
呆気に取られている彼に会釈をして、慌ててその場から立ち去ろうとした。
「それって、俺？」
だけど、彼は逃がしてくれなかった。
逃げようとする私の前に回り込んで、「俺でしょ？」って言いながら、私の顔を覗き込む。
「・・・・・ノート、見たんですか？」
「落ちた時に開いてた。故意に見たんじゃねーよ」
「・・・・・あの、気持ち悪かったらごめんなさい。でも、ストーカーとかそういうのじゃないですから」
信じてくれるかどうかわからなかったけど、そんなことよりも、私はこの場から早く立ち去りたかった。
「じゃあ、どういうの？」
「え？」
「何で俺の寝顔描いてんの？」
「・・・・それは・・・
「俺に告白する？」
「？！・・・・しない」
「何で？好きなんじゃないの？」
「・・・・すごい自信」
「だって俺だったら描かないもん。好きじゃないヤツの寝顔なんて」
身体の中にある図星を、彼から抜き取られたように錯覚する。
そんなに直球に核心をついてくるなんて、ちょっぴり意地悪だと思う。
「・・・・帰ります。ノート、ありがとうございました」
「俺は、可愛いと思ってる」
少しも目をそらさず、彼はそう言った。
「月城さんのこと、可愛いと思ってる」
気付く、数秒前だったのに、彼がそんなことを言うから、私は自分で気付く前に、彼に教えられてしまった。
私は、毎日気持ちよさそうに眠っている、北山くんのことが好きなんだ。
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みき(プロフ) - マキさんご無沙汰してます。そして今頃すみません。全てのシーン私の抱いているみっくんでした。すごいなぁ〜。こんな素敵なお話を描けるマキさんは本当に優しい人なのだろう。私ではないけど彼女の私は沢山幸せをもらいました。さびしいです。ありがとうございました。 (2021年11月1日 15時) (
レス) @page49 id: e2d6b3aa5d (このIDを非表示/違反報告)
わわか(プロフ) - １つずつ終わっていくのがすごく寂しいです。マキさんの言葉、物語がとてもとても好きでした！他のメンバーの話も楽しみであり、終わってしまうのがさみしくもあり。最後までしっかり読ませていただきます！ (2021年5月28日 17時) (レス) id: 3db566fc35 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 北山くんが主人公のお話、終わっちゃいました。私の書く北山くんが、北山くんをお好きな皆様にも温かく受け入れてもらえて嬉しかったです！ありがとうございました(*^^*) (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちはるさん» 元は横尾さんがお好きだったんですね(*^^*)北山くんと横尾さんの関係性がとても好きなので、二人のお話が書けて私も楽しかったです！身長差もそうですけど、情熱と冷静みたいな対極な二人がいいなぁと思っています＼(^^)／ (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
ちい★(プロフ) - 終わっちゃって寂しいです…。マキさんの書くお話は苦しくなったり幸せになったり…リアルで大好きです！！！読み返してきます★ (2021年5月16日 11時) (レス) id: aba16733a8 (このIDを非表示/違反報告)
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