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「うわぁ。すごーい!広ーい!」
6畳1間のオンボロ木造アパートに住む私には夢みたいな、広くて綺麗なタワーマンション。
「座れば?」
「・・はい」
北山さんに促されて、私は何人座れるのかわかんないくらい広いソファに恐る恐る座った。
北山宏光、35歳。
何してる会社なのか知らないけど、名前だけは知っている有名企業に勤める会社員らしい。
ペット代わりなんてごめんだと思ったけれど、その後北山さんに提示された待遇のよさと、自分が置かれた状況の崖っぷちさが相まって、思わず家までついてきてしまった。
「で?アパートの更新いつだって?」
「来月」
「払えんの?お前の姉ちゃん、家賃払えてるのかも怪しいって言ってたぞ」
「・・・今月は、何とか。でも、来月はわかんないです。掛け持ちしてたバイト先が一つ潰れちゃって」
「親には頼れないわけ?」
「連れ帰されると思うので・・・」
「ふ〜ん。じゃあ、どうする?ここに一緒に住んで、一緒にメシ食う?」
「・・・恋人になって欲しいわけじゃないんですよね?」
「うん。そういう魅力は感じてねーわ」
「・・・そうですか」
「毎日忙しないわけよ。忙殺される感じ。恋人作って、連絡もご機嫌も取る気力ないわけ。わかる?この感じ」
「わかんないです」
「わかんねーだろうなぁ。でも、自分以外の生き物が、家にいたらいいなって思うんだよね。丁度あんたみたいな、よく食べて、多少のことは気にしなさそうなヤツ」
「・・・ますますわかんないです」
「どうする?家賃なし、水道光熱費なし、食費なし、恋愛感情の持ち込みなし」
「・・・それは、とても魅力的です」
「んじゃあ、これ」
そう言って北山さんは、私に合鍵を握らせた。
「別に自由だから。いつ出て行ってもらっても構わない。無茶言ってんのはわかってるから」
「・・・・北山さん、寂しいんですか?」
「何で?」
「誰かに家にいて欲しいなんて。普通は煩わしいでしょう?」
「ん〜・・・・そうかもな。少し疲れてるのかも」
そう言って北山さんは少しだけ笑った後、私の膝に寝転んだ。
「・・・北山さん?」
「いいなぁ、人肌。沁みるわ」
こんなに広いマンションに住んで、たくさんお金を稼いでも、案外みんな孤独なのかもしれない。
あっという間に北山さんの寝息が聞こえてきて、私は身動きが取れなくなってしまった。
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みき(プロフ) - マキさんご無沙汰してます。そして今頃すみません。全てのシーン私の抱いているみっくんでした。すごいなぁ〜。こんな素敵なお話を描けるマキさんは本当に優しい人なのだろう。私ではないけど彼女の私は沢山幸せをもらいました。さびしいです。ありがとうございました。 (2021年11月1日 15時) (レス) @page49 id: e2d6b3aa5d (このIDを非表示/違反報告)
わわか(プロフ) - 1つずつ終わっていくのがすごく寂しいです。マキさんの言葉、物語がとてもとても好きでした!他のメンバーの話も楽しみであり、終わってしまうのがさみしくもあり。最後までしっかり読ませていただきます! (2021年5月28日 17時) (レス) id: 3db566fc35 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 北山くんが主人公のお話、終わっちゃいました。私の書く北山くんが、北山くんをお好きな皆様にも温かく受け入れてもらえて嬉しかったです!ありがとうございました(*^^*) (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちはるさん» 元は横尾さんがお好きだったんですね(*^^*)北山くんと横尾さんの関係性がとても好きなので、二人のお話が書けて私も楽しかったです!身長差もそうですけど、情熱と冷静みたいな対極な二人がいいなぁと思っています\(^^)/ (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
ちい★(プロフ) - 終わっちゃって寂しいです…。マキさんの書くお話は苦しくなったり幸せになったり…リアルで大好きです!!!読み返してきます★ (2021年5月16日 11時) (レス) id: aba16733a8 (このIDを非表示/違反報告)
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