チョコレートと花束を(Ki)

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アラームが鳴って、目を覚ます。


身体を起こして伸びをしながら、私はそのまま固まってしまった。


だってソファの上には、寝室にいるはずの北山さんが毛布を抱きしめながら眠っていたから。



「・・・北山さん」




恐る恐る、身体を揺らす。



北山さんは不機嫌に顔をしかめて、私に背を向けた。



「北山さん？起きないの？」



「・・・何時？」



「7時」



「・・・・起きる」




目を閉じたまま起き上がって、北山さんはアクビをする。




「どうしてソファで寝てたんですか？」



「ん〜？お前が一緒に寝てくんないから」



「一緒に寝ないって言ったの、北山さんですよ？」



「・・・そっか」



「やっぱり落ち着かないの？誰か側にいないと」



閉じていた目蓋を、北山さんはゆっくりと開いて、それからしばらくの間、私の顔をじっと見つめた。





「付き合おっか」




「・・・・え？」




「嫌？」



「ちょっと待ってください！付き合うとかそういうの嫌だって言ってたじゃないですか」




「うん」




「なのにどうして・・・？」




「いや、昨日までそう思ってたんだけど、ソファに寝ちゃってんだもん」




「え？」




「わざわざ夜中に移動してまで、お前の側で寝たかったんだなって思ってさ」




「何か他人事みたい」



「自分でもよくわかってないからな」



「よくわからないのに付き合おうかなんて言わないでください」



「でも付き合ってみないとわかんねーこともあるじゃん」



「・・・・何なんですか？どうしてそんなに自分勝手なんですか？」




「じゃあ、今から抱きしめてもいい？」



「は？！」



「抱きしめられて嫌だったら俺のこと突き飛ばして？付き合うのはナシで。俺は二度と、お前にちょっかいかけないから」




「・・・・・もし・・・・嫌じゃなかったら？」




「抱きしめ返してよ。A」




ペタンと床に座り込む私の身体を、寝癖をつけたままの北山さんが抱きしめる。



「私のことを好きになったとは思えない。前に付き合ってた彼女のことも、完全に忘れたわけじなゃないですよね？」



「名探偵なの？」




「図星？最低。信じられない」




「じゃあ早く突き飛ばしてよ」




私が出会った中で、いちばん大人の男の人。


うまく言いくるめられてることはわかってるのに、どうしても、この腕の中から逃れることができない。

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