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「水上さん」




名前を呼ばれて顔を上げると、コピー機の前で玉森先輩が私に向かって手招きをしていた。




多分、玉森先輩は私のことを覚えているみたいだけど、会社では初対面設定を崩すことなく、私のことを"水上さん"と呼んでいる。






「はい」





玉森先輩の隣に立つと、先輩は私の耳元に顔を近づけた。





「な・・何ですか?!」




「10分後にあそこに並んで?」




「え?」





玉森先輩が指差したのは窓の外で、私は窓際に立って辺りを見渡す。




「・・・あの、何に並ぶんですか?」





「キッチンカーに並んで?今日は中華の気分だから中華弁当のキッチンカーで」




「え?」




会社が入っているビルの周りには、昼時の会社員を狙ったキッチンカーが数台並んでいた。





「・・誰のランチですか?」




「俺」





「・・私が並ぶんですか?」





「あなた以外に誰が並ぶんですか?」






驚いてるのは私の方なのに、玉森先輩は私より更に驚いた顔をしてそう言った。





「どうして私が?」




「水上さんも自分の弁当買えばいいじゃん」




「私、持ってきてますから」




「それは晩飯にすればいいっしょ」




「そんな・・・」




「ほら、そろそろ行った方がいいよ」





玉森先輩に促されるまま外に出て、まだ人もまばらなキッチンカーの前に並ぶ。







高校生の頃、玉森先輩のお昼の為に、こんなふうに購買に並んでパンを買った。





あの時よりずいぶん大人になったのに、私と玉森先輩の距離は、10年前と何にも変わらない。





玉森先輩がいる、ビルの8階を見上げる。




太陽の日差しがまぶしくて、何にも見えなかった。

8→←6 (高1・春)



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にかみつば(プロフ) - マキさん» いえいえ。読んでみたいなと思った物から読んでいたので、教えてもらってなかったら後回しにしてしまっていたと思うので、素敵な作品に出会えて嬉しかったです。これからも楽しみにしています。 (2020年7月13日 22時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかみつばさん» こちらを既に読まれていると勝手に思い込んでいました(>д<)ネタバレでしたね!すみません( ;∀;)この話はなかなか辛いものがありますよね。自分で書いてて可哀想って思ってました笑! (2020年7月13日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 他小説へのコメントの返信を拝見しこちらも読んでみたくなりました。優しさを優しさと受け取る事が許されない切なさや、婚約パーティーに出席しようと決めた心情などが丁寧に書かれていて引き込まれました。この主人公の女性の心も綺麗過ぎて泣けます。 (2020年7月12日 1時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかはるさん» ありがとうございます(*^^*)切ない気持ちになってくださって嬉しいです!先は私にも全然見えてなくて怖いですが、《2》にも遊びにきていただけたらと思います(^-^) (2020年5月31日 10時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
にかはる(プロフ) - 切なすぎて号泣です!!続きも楽しみにしています! (2020年5月29日 23時) (レス) id: 1c69577c40 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年11月25日 23時

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