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高いヒールで歩くのが怖くて、会場にはタクシーで向かった。
タクシーの扉が開いた先には、正装した北山さんがいて、驚く私の手を引いて、エスコートしてくれた。
「あの・・・ありがとうございます」
「別に。今日の仕事だから」
北山さんがいてくれてよかった。
会場の雰囲気に圧倒されて、私一人だったら、緊張して身動きが取れなかったかもしれない。
本当に玉森先輩はこれから、世界の中心みたいなこんな場所で、一生を生きていくんだろうか。
世界の片隅みたいな倉庫で一緒に過ごしていたはずなのに、今、私たちのいる場所は、こんなにも遠い。
洪水みたいな拍手の中を、先輩と新堂さんが、腕を組んで歩いていく。
まるで、映画のワンシーンみたいだ。
先輩、いつの間に、そんなに正装が似合うようになったんですか?
私は知らなくて・・
制服を着崩していた先輩しか知らなくて、
校則違反のピアスを堂々と着けていた先輩しか知らなくて、
私に意地悪を言って、私を困らせて、それから、甘ったるい笑顔で笑う玉森先輩しか知らないから、今、目の前にいるあなたが、全然知らない人に見えて、それが、すごく、苦しい。
「もうちょい我慢しろ」
「・・え?」
「パーティーが終わったら、すぐに泣かせてやるから。誰もいない場所で、思いっきり泣かせてやるから」
北山さんはそう言って、私の手を握ってくれた。
「・・・はい」
北山さんの言葉に励まされて、ちゃんと顔を上げる。
玉森先輩は、一度たりとも、私の顔を見ようとはしなかった。
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にかみつば(プロフ) - マキさん» いえいえ。読んでみたいなと思った物から読んでいたので、教えてもらってなかったら後回しにしてしまっていたと思うので、素敵な作品に出会えて嬉しかったです。これからも楽しみにしています。 (2020年7月13日 22時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかみつばさん» こちらを既に読まれていると勝手に思い込んでいました(>д<)ネタバレでしたね!すみません( ;∀;)この話はなかなか辛いものがありますよね。自分で書いてて可哀想って思ってました笑! (2020年7月13日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 他小説へのコメントの返信を拝見しこちらも読んでみたくなりました。優しさを優しさと受け取る事が許されない切なさや、婚約パーティーに出席しようと決めた心情などが丁寧に書かれていて引き込まれました。この主人公の女性の心も綺麗過ぎて泣けます。 (2020年7月12日 1時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかはるさん» ありがとうございます(*^^*)切ない気持ちになってくださって嬉しいです!先は私にも全然見えてなくて怖いですが、《2》にも遊びにきていただけたらと思います(^-^) (2020年5月31日 10時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
にかはる(プロフ) - 切なすぎて号泣です!!続きも楽しみにしています! (2020年5月29日 23時) (レス) id: 1c69577c40 (このIDを非表示/違反報告)
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