27・玉森先輩 ページ27
「遅かったね」
コンビニから帰ってきた俺に、莉子はホッとしたようにそう言った。
「寝ててよかったのに」
「だって心配だったんだもん」
水上は、無事に自宅にたどりついただろうか。
俺には、そんなことを心配する必要も権利もなくて、この気持ちの置き所を、全然見つけられないでいる。
「何買ってきたの?」
「煙草と炭酸水」
手持ち無沙汰になって、取り出した炭酸水のキャップを回した。
「うわっっ」
勢いよく吹き出した水が、俺の髪とTシャツを濡らす。
「やだ、どうしたの?タオル持ってくるから待ってて」
莉子が、持ってきたタオルで甲斐甲斐しく濡れた身体を拭いてくれる。
俺が莉子にきちんと気持ちを向けていさえすれば、彼女の気持ちもずっと穏やかでいられるんだ。
なのに・・・・
なのに俺は、心配してくれる莉子を前にして、水上だったらって、そんなことを考えてしまう。
水上だったら、炭酸水にまみれた俺を見て、お腹を抱えて笑うんじゃないのかとか、そんな水上に俺は不機嫌になって、彼女はきっとオロオロするんだろうな、とか。
そして俺も笑うんだ。ざまーみろって。
それから・・
「裕太?」
「え?」
「どうしたの?ぼーっとして」
「あ・・・びっくりしちゃって。こんなに勢いよく噴き出すもんなんだね」
「振っちゃったの?」
「ん〜?どうだったかな?」
「裕太って時々赤ちゃんみたいに見える」
「赤ちゃん?!」
「だってついついお世話したくなるんだもん」
俺が汚した床を拭いてくれている彼女に、視線を合わせた。
「もうちょっと、しっかりするね?」
莉子は俺の首に腕を回して、それから唇にキスを落とす。
「俺、濡れてるよ?」
「いいよ」
そう言って彼女は、少しの距離もないくらいに、俺の身体にぴったりとくっついた。
俺の全ては、これから、この子のものだ。
もう余計なことは、少しも考えちゃいけない。
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にかみつば(プロフ) - マキさん» いえいえ。読んでみたいなと思った物から読んでいたので、教えてもらってなかったら後回しにしてしまっていたと思うので、素敵な作品に出会えて嬉しかったです。これからも楽しみにしています。 (2020年7月13日 22時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかみつばさん» こちらを既に読まれていると勝手に思い込んでいました(>д<)ネタバレでしたね!すみません( ;∀;)この話はなかなか辛いものがありますよね。自分で書いてて可哀想って思ってました笑! (2020年7月13日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 他小説へのコメントの返信を拝見しこちらも読んでみたくなりました。優しさを優しさと受け取る事が許されない切なさや、婚約パーティーに出席しようと決めた心情などが丁寧に書かれていて引き込まれました。この主人公の女性の心も綺麗過ぎて泣けます。 (2020年7月12日 1時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかはるさん» ありがとうございます(*^^*)切ない気持ちになってくださって嬉しいです!先は私にも全然見えてなくて怖いですが、《2》にも遊びにきていただけたらと思います(^-^) (2020年5月31日 10時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
にかはる(プロフ) - 切なすぎて号泣です!!続きも楽しみにしています! (2020年5月29日 23時) (レス) id: 1c69577c40 (このIDを非表示/違反報告)
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