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就業時間は過ぎていたけど、みんな忙しく動きまわっていた。


そんなせわしない空気を変えるように、オフィスのドアが開く。

 

不機嫌な顔をしてそこに立っていたのは、玉森さんの恋人の新堂さんだった。




「何?」




そう尋ねたのは三条さんなのに、新堂さんの目は、真っ直ぐに、私のことを見据えていた。



目が合うと、新堂さんはツカツカと私目掛けて歩いてくる。




「水上さん!」




「・・・はい」




「どういうこと?!」



「え?」



憤る新堂さんが突きだしたのは、印刷された私の履歴書だった。



「・・・あの・・



「あなた、玉森くんと同じ高校出身でしょ?」




「・・・」




「知ってたんでしょ?玉森くんがこの会社にいるって知ってて、誰かにここで働けるように頼んだんじゃない?」




「違います!」




「じゃあどうして隠してたのよ!」




私の腕を掴もうとした新堂さんの手を、玉森先輩が払い除ける。




「いい加減にしなよ」




先輩の声は、静かな怒りに充ちていて、凍えてしまいそうなほどに冷たかった。




「水上さんを庇うの?」




「そういうわけじゃなくて、同じ学校なら何なの?そんなに怒るようなことじゃない」




「同じ学校なことが問題なんじゃなくて、二人して隠してたことか嫌なの!」




「水上さんとは学年が違うんだし、別に友達だったわけじゃない」




「じゃあ、彼女のことは知らなかったの?」




玉森先輩は一瞬私を振り返って、それからはっきりと答えた。





「知ってたよ」






知らないって、そう答えるんだと思ってた。


私もそれでいいと思っていたし、金輪際、過去の話はしないようにしなきゃって、たった今、心の中で誓ったのに・・・





「だけど水上さんは、俺のことなんか知らなかったと思うよ?俺は全然、目立つような生徒じゃなかったから」





嘘。





玉森先輩は校内で一番目立ってた。





みんな、あなたに憧れていた。




私はずっと、先輩のことが忘れられずにいたのに。




「新堂さん、専務が呼んでるみたいよ!」



内線をとった三条さんがそう伝えると、新堂さんは悲しそうに顔を歪めて、私たちに背中を向けた。

23→←21・玉森先輩(高3・夏)



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にかみつば(プロフ) - マキさん» いえいえ。読んでみたいなと思った物から読んでいたので、教えてもらってなかったら後回しにしてしまっていたと思うので、素敵な作品に出会えて嬉しかったです。これからも楽しみにしています。 (2020年7月13日 22時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかみつばさん» こちらを既に読まれていると勝手に思い込んでいました(>д<)ネタバレでしたね!すみません( ;∀;)この話はなかなか辛いものがありますよね。自分で書いてて可哀想って思ってました笑! (2020年7月13日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 他小説へのコメントの返信を拝見しこちらも読んでみたくなりました。優しさを優しさと受け取る事が許されない切なさや、婚約パーティーに出席しようと決めた心情などが丁寧に書かれていて引き込まれました。この主人公の女性の心も綺麗過ぎて泣けます。 (2020年7月12日 1時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかはるさん» ありがとうございます(*^^*)切ない気持ちになってくださって嬉しいです!先は私にも全然見えてなくて怖いですが、《2》にも遊びにきていただけたらと思います(^-^) (2020年5月31日 10時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
にかはる(プロフ) - 切なすぎて号泣です!!続きも楽しみにしています! (2020年5月29日 23時) (レス) id: 1c69577c40 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年11月25日 23時

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