三つ編みをほどかれた日(赤色編)

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「昨日はすみませんでした！」



千賀さんが出勤してきたと同時に、私は土下座しちゃいそうな勢いで、深く深く頭を下げた。



「うわっ！びっくりした〜！....水上さん、どうしたの？」


「昨日、あんなに手伝ってもらったのに、私、お礼もちゃんと言えてなくて...」



「玉森と、何か用事があったんでしょ？そんなの気にしなくていいよ」




朝なのに、キラキラのピカピカな笑顔で、千賀さんはそう言ってくれた。




「でも...




「玉森くん！また遅刻ギリギリ！」




三条さんの大きな声で、私は玉森先輩の出勤を知る。



「あ〜、すっげー効くわ、朝っぱらからの三条の怒鳴り声」




「は？」




「エナジードリンクより目が覚める。さぁ、バリバリ仕事片付けちゃおっかな〜」




少しもやる気を感じられない声色で、玉森先輩はそう言った。




「・・・玉森さん」




「何だよ」




「た・・玉森さんも謝ってください」




「はぁ？誰に」




「千賀さんです！私と玉森さんの仕事手伝ってくれたのに、ちゃんとお礼も言ってないじゃないですか！」





抗議する私を、玉森先輩は冷たい目で見下ろしたけど、私は目をそらさなかった。





「千賀！」




「ん？何？」





「悪かったな、昨日」





「玉森まで？俺は別に大したことしてないんだってば」





千賀さんは「もう充分感謝してもらったよ」って笑ってくれた。





「おい」




「・・・はい」





「謝ったぞ」




「わかってます」




「お礼は？」




「え？」




「お前の言う事聞いたお礼」




「意味が・・・




「早く」




「あ・・ありがとうございました」





「何でも言うこと聞くんだな。プライドないの？お前？」





ムカつく〜！！って言って地団駄を踏みたい。
罵詈雑言を浴びせたいのに、私には語彙力が無さすぎるから、渾身の力で玉森先輩を睨んだ。




少しもたじろがない玉森先輩の顔は、相変わらず涼しげ。





「水上さん」





「・・・・はい」





「強くなったね」






意外すぎる玉森先輩の言葉。





あの頃と、少しも変われていないと思っていたのに、玉森先輩の言葉は思いがけないほど、強く響いた。

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