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勤めていた会社が倒産したのは、本当に突然だった。
大学を卒業して以来、勤めてきた会社。
積み上げた勤務年数なんて何の意味も持たず、私は一瞬で無職になった。
「それで、退職金出たの?」
「・・出てない」
「あ〜あ。お金、大丈夫?』
「大丈夫じゃないよ」
うなだれる私に、友達が同情的な視線を送る。
「いっそ結婚したら?」
「・・誰と?」
「あ、相手いないもんね」
「・・ねぇ、傷口えぐりにきたの?塩塗り込みにきたの?」
「ひどい言い草。いい話を持ってきてあげたのに」
「いい話?何?誰か紹介してくれるの?」
「そう、紹介してあげる」
「どんな人?」
「人じゃない。仕事」
「・・仕事?!」
「産休の人の代わりで1年間だけなんだけど、どうかなぁって、知り合いが探しててさ」
「はい!私が行きます!やらせてください!」
「期限付きだよ?」
「1年働けるんでしょ?今の私にはありがたいよ。ナミちゃんの知り合いの人に行きたいって伝えてくれる?」
・
そう言って友達に紹介してもらったのが、今目の前にある会社だ。
受付に名前を告げると、すぐに背の高い女性が私の前に現れた。
「水上さん?」
「・・はい!水上Aです」
「三条です。ナミとは親戚なの。すぐに来てくれて助かったぁ。もう猫でも犬でも何でもいいから手を貸してくれなきゃどうにもこうにも回らなくて」
「はぁ・・」
「班ごとにオフィス別れてるから、小人数だし、すぐにみんなと仲良くなれると思うわ」
「班?」
「そう。イベント会社だからね。企画から実施まで、班ごとにやるの。うちは三条班よ?」
「あ、三条さん・・」
「一応課長だから」
「お世話になります」
年齢はそんなに変わらない気がするのに、三条さんとのこの違い。
軽く落ち込みそうになったけど、落ち込める立場ではないことに気づいて気を取り直した。
「おはよー!」
元気よく、三条さんが扉を開く。
日当たりのよい部屋なのか、一気に視界が明るくなった。
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にかみつば(プロフ) - マキさん» いえいえ。読んでみたいなと思った物から読んでいたので、教えてもらってなかったら後回しにしてしまっていたと思うので、素敵な作品に出会えて嬉しかったです。これからも楽しみにしています。 (2020年7月13日 22時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかみつばさん» こちらを既に読まれていると勝手に思い込んでいました(>д<)ネタバレでしたね!すみません( ;∀;)この話はなかなか辛いものがありますよね。自分で書いてて可哀想って思ってました笑! (2020年7月13日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 他小説へのコメントの返信を拝見しこちらも読んでみたくなりました。優しさを優しさと受け取る事が許されない切なさや、婚約パーティーに出席しようと決めた心情などが丁寧に書かれていて引き込まれました。この主人公の女性の心も綺麗過ぎて泣けます。 (2020年7月12日 1時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかはるさん» ありがとうございます(*^^*)切ない気持ちになってくださって嬉しいです!先は私にも全然見えてなくて怖いですが、《2》にも遊びにきていただけたらと思います(^-^) (2020年5月31日 10時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
にかはる(プロフ) - 切なすぎて号泣です!!続きも楽しみにしています! (2020年5月29日 23時) (レス) id: 1c69577c40 (このIDを非表示/違反報告)
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