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「私の担任、玉森先生なんです」
「・・」
「この前、うちの学校文化祭があって、私のクラスはタピオカジュース売ってたんですけど、一生懸命タピオカ混ぜてた先生が、フラーってテント出ていった時があって、どうしたんだろうって思ったから、私、先生の後をつけたんです」
一方的に捲し立てる彼女の口元。
目を見ることはできなかった。
「玉森先生、何してたと思います?」
「・・さぁ」
「彼女とキスしてたんです!職場ですよ?信じられますか?!」
「キスなんてしてない!」
咄嗟に叫ぶ私を見て、彼女は笑う。
「証拠があるんです」
彼女が私に向けた携帯の画面。
玉森さんが私の髪についた枯れ葉を取ってくれた一瞬の出来事。
画面に収まる角度は、確かにキスをしているように見えてしまう。
「これは、髪に枯れ葉がついてて・・
「これを見て、それを信じる人っているのかな」
「え?」
「私が・・例えば教頭先生に、"玉森先生が学校で恋人とキスしてました"なんて言ったら、玉森先生はどうなっちゃうのかな?私がこの写真を拡散したら、玉森先生はどうなっちゃうのかな?」
「どうしてそんなこと・・・」
「好きなんです。わかるでしょ?」
玉森さんに恋をする彼女の、私を見る目に憎しみがこもる。
「好きだからって、こんな嘘をばらまくの?」
「私だってばらまきたくないし、教頭にだって告げ口したくないです」
「じゃあ・・
「あんたが別れれば」
「・・・」
「玉森先生と別れて?そしたら私は卒業まで大人しくしておくから」
「・・別れなかったら?」
「ばらまくし、教頭に見せる。きっと解雇だね。玉森先生、もう、先生じゃなくなっちゃう。あんたのせいで」
「・・あなた、どうして私の名前知ってるの?どうしてこの大学に通ってるって知ってるの?」
「秘密」
玉森さんへの気持ちが、暴走している。
彼女の善意に訴えたところで、彼女は聞く耳をもたないだろう。
「恋人だったら、玉森先生の仕事を奪うなんてことしないですよね?」
彼女は私の耳元でそう囁いて、もう一度携帯の画面を見せつけた。
「返事は、また今度聞きにきますね?」
周りの音が消えて、景色が色を失う。
絶望って、きっとこういうことなんだ。
「さようなら、真野Aさん」
彼女が私に背中を向ける。
弾むように、セーラー服のリボンが揺れた。
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にかみつば(プロフ) - 北山くんのお話を優先して読んでたのですが、こちらも読んでみたらとても面白くてハマりました。三上先生の登場で更に面白い展開になってきて続きが楽しみです。いつも素敵なお話を作ってくださり、公開してくださりありがとうございます。 (2020年7月17日 16時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - marumarusubasubさん» marumaruさんは、もしかして横尾担様でしょうか?もしそうなら一緒です〜\(^^)/こちらが終わったら、書きかけの横尾さんのお話に取り組みたいと思ってます。いくつかお話をかかえてないと頑張れないので、未完がたくさんあるのがたまに傷な私です笑(*´-`)頑張ります★ (2019年9月16日 8時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
marumarusubasub(プロフ) - レスありがとうございます。嬉しいです。すごく読みやすく、特に横尾さんのお話大好きです。個人的に横尾さんのお話熱望ですm(_ _)mこれからも楽しみにしています! (2019年9月14日 20時) (レス) id: 7cd9d44213 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 本当に( ;∀;)やっとだったのに。設定的に30年近くかけて、初めて人を好きになったのに。。という、やりきれない気持ちになりました(自分で書いておきながら笑)。皆さんが願ってくださるラストになればいいなと思いながら(私も先は知らないのです)更新がんばります★ (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - わわかさん» わわわわ(*´-`)私の書いたお話にかわいさを感じてくださってるなんて〜(*^-^*)嬉しいな♪ちょっと今の展開は穏やかではありませんが、ほんわかじんわりなお話に戻れるように苦しい場面を乗り越えたいと思いますp(^^)q (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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