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バイトから帰ったら、うちの中に玉森さんがいて、私はとても驚いた。



玉森さんとお姉ちゃんのいがみ合いに挟まれた宮田さんは、生気を吸いとられたように疲れ果てている。



「・・玉森さん、ここで何してるの?」




「ん〜と・・・あ、そうだ。交渉しにきたんだった」




「何を?」




「お前の門限の時間、もうちょい遅くしてくんねーかなって」




「そのために、わざわざ?」




「うん」





門限があと少し遅かったらって、何度も思った。


この前も会えたのは、マンションのエントランスでの5分間だけ。




「・・お姉ちゃん」




「何?やめてよ?Aまで門限遅くしてなんて言わないでよ?」




「終電までなんて言わないから、あと30分だけ、遅くしてくれない?」




「30分でいいの?」




「うん。そしたらお姉ちゃんも、あんまり心配しなくていいでしょ?」




私は玉森さんに会いたくて、だけどお姉ちゃんに心配はかけたくない。


そのワガママを、"30分"っていう時間が、叶えてくれるような気がした。




「たった30分じゃなんもできねーじゃん」




「だから玉森くんは、Aに何をしようとしてるわけ?!」




「玉森さん、お姉ちゃんを煽らないで?話がまとまらなくなっちゃう」




私が玉森さんを軽く睨むと、彼は私に向かってあっかんべーって舌を出した。




「よし!いいよ!俺が許可する!」





やけくそになった宮田さんが、大きな声でそう叫ぶ。




「ちょっととしくん!」




「和香ちゃん、ごはん食べよ?俺、お腹すいちゃった」




「30分だからね!」って悔しそうに言い続けるお姉ちゃんを、宮田さんがキッチンまで連れていく。



勇敢な義兄の活躍により、私は門限の30分間の延長を勝ち取った。





「おい」



テーブルに頬杖をついた玉森さんは、不満げに唇を尖らせている。




「・・何ですか?」




「30分は短けーだろ」




「充分です」




「俺が充分じゃない」




「え?」




私が目を見開くと、玉森さんは自分が何を言ったのかに気づいて、口元を押さえながら顔を赤らめた。




「・・顔、真っ赤」




「うるさい」





玉森さんは不機嫌になっちゃったのに、私はとても嬉しかった。




「たくさん会いたいって思ってくれてるんですね」




「思ってねーし」





「はい」






大人なのに、どうしてこんなに天の邪鬼なんだろう。




可笑しくなって笑ったら、玉森さんに凄い形相で睨まれた。

34→←32 (宮田くん)



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にかみつば(プロフ) - 北山くんのお話を優先して読んでたのですが、こちらも読んでみたらとても面白くてハマりました。三上先生の登場で更に面白い展開になってきて続きが楽しみです。いつも素敵なお話を作ってくださり、公開してくださりありがとうございます。 (2020年7月17日 16時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - marumarusubasubさん» marumaruさんは、もしかして横尾担様でしょうか?もしそうなら一緒です〜\(^^)/こちらが終わったら、書きかけの横尾さんのお話に取り組みたいと思ってます。いくつかお話をかかえてないと頑張れないので、未完がたくさんあるのがたまに傷な私です笑(*´-`)頑張ります★ (2019年9月16日 8時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
marumarusubasub(プロフ) - レスありがとうございます。嬉しいです。すごく読みやすく、特に横尾さんのお話大好きです。個人的に横尾さんのお話熱望ですm(_ _)mこれからも楽しみにしています! (2019年9月14日 20時) (レス) id: 7cd9d44213 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 本当に( ;∀;)やっとだったのに。設定的に30年近くかけて、初めて人を好きになったのに。。という、やりきれない気持ちになりました(自分で書いておきながら笑)。皆さんが願ってくださるラストになればいいなと思いながら(私も先は知らないのです)更新がんばります★ (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - わわかさん» わわわわ(*´-`)私の書いたお話にかわいさを感じてくださってるなんて〜(*^-^*)嬉しいな♪ちょっと今の展開は穏やかではありませんが、ほんわかじんわりなお話に戻れるように苦しい場面を乗り越えたいと思いますp(^^)q (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年6月7日 0時

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