29 ページ29
20時半を過ぎても、玉森さんは仕事から帰って来なかった。
「今日は会えないかな」
22時の門限は、いまだにちゃんと守っている。
"真野に心配かけちゃだめだよ"って、玉森さんはそう言った。
"お姉ちゃんと仲が悪いのに、どうして気遣ってくれるの?"って聞いたら、"Aのお姉ちゃんだから"って、当たり前のように言ってくれた。
ふいに見せる玉森さんの優しさに、私は何度だって恋をする。
「ただいま」
そんなことを考えていると、玉森さんはいつの間にか帰宅していた。
「あ!お帰りなさい」
「出迎え無し?」
「考え事してたら、玉森さんが帰ってきたことに気づきませんでした」
「何考えてたの?」
「・・いや・・・その・・
「言えないこと?」
床に座っている私と視線を合わせるように、玉森さんは、しゃがんで顔を近づける。
「・・玉森さん、近いです」
「もっと近づける?」
「え?」
私の胸に顔をうずめて、玉森さんは長い腕を私の身体に巻き付けた。
「疲れた」
「・・お仕事、大変だったんですか?」
「疲れたから、会いたかった。・・お前に」
恐る恐る、玉森さんの髪を撫でる。
今の瞬間も、私は玉森さんに恋をした。
「・・・玉森さん」
「ん?」
「何を考えてたのか、言ってもいいですか?」
「どーぞ?」
「・・何回も、恋をするな・・・って」
「何回も?」
「優しくしてくれると、好きになるし、こうやって甘えてくれると、また好きになります」
「・・・言ってて恥ずかしくないのかよ」
「・・・・恥ずかしいです」
「バカだな」
「・・・・ひどい」
玉森さんは顔を上げて、それから両手で私の頬を包み込んだ。
「俺は、会いたいって思う。嬉しい時とか疲れた日に。楽しい時とか悔しい日に、いつもAに会いたいって思う」
「・・・玉森さん?」
「俺もお前に、恋をしてるんだろうな」
好きの気持ちに、限界はあるんだろうか。
私には、今のところ限界は見えない。
毎日、好きになっていく。
毎日、大切な人になっていく。
「玉森さん、大好きです」
1572人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にかみつば(プロフ) - 北山くんのお話を優先して読んでたのですが、こちらも読んでみたらとても面白くてハマりました。三上先生の登場で更に面白い展開になってきて続きが楽しみです。いつも素敵なお話を作ってくださり、公開してくださりありがとうございます。 (2020年7月17日 16時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - marumarusubasubさん» marumaruさんは、もしかして横尾担様でしょうか?もしそうなら一緒です〜\(^^)/こちらが終わったら、書きかけの横尾さんのお話に取り組みたいと思ってます。いくつかお話をかかえてないと頑張れないので、未完がたくさんあるのがたまに傷な私です笑(*´-`)頑張ります★ (2019年9月16日 8時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
marumarusubasub(プロフ) - レスありがとうございます。嬉しいです。すごく読みやすく、特に横尾さんのお話大好きです。個人的に横尾さんのお話熱望ですm(_ _)mこれからも楽しみにしています! (2019年9月14日 20時) (レス) id: 7cd9d44213 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 本当に( ;∀;)やっとだったのに。設定的に30年近くかけて、初めて人を好きになったのに。。という、やりきれない気持ちになりました(自分で書いておきながら笑)。皆さんが願ってくださるラストになればいいなと思いながら(私も先は知らないのです)更新がんばります★ (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - わわかさん» わわわわ(*´-`)私の書いたお話にかわいさを感じてくださってるなんて〜(*^-^*)嬉しいな♪ちょっと今の展開は穏やかではありませんが、ほんわかじんわりなお話に戻れるように苦しい場面を乗り越えたいと思いますp(^^)q (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ