26 ページ26
予想に反して、玉森さんは素直に我が家を訪れた。
「あ・・本当に来た」
「呼んだのはそっちだろ」
玉森さんは靴を脱いで、ツカツカと部屋の中に入っていく。
「ここに座って」
ダイニングテーブルには姉夫婦が座っていて、面接官の人みたいに神妙な面持ちを作っている。
「は?」
「いいから、ここに座りなさいよ」
「玉、座って?」
玉森さんは、怪訝そうに姉夫婦を交互に見て、それから宮田さんの前の席に座った。
「何なの?」
「玉森くん、Aと付き合ってるんだって?」
「うん」
「何で付き合ってるの?」
「お姉ちゃん!変なこと聞かないでよ」
「変なことじゃないでしょ?こっちは大事な妹を人質に取られてるみたいなもんなんだから」
ヒートアップするお姉ちゃんに、玉森さんは冷めた視線を送る。
「ほら、見て?!この人を人とも思ってないような目!」
「お姉ちゃんがうるさいからでしょ?」
「そうだよ。落ち着いて、和香ちゃん」
私たちのやり取りを黙って聞いていた玉森さんが、突然、私の肩に、コテンって自分の頭をもたれさせた。
「た・・玉森さん?どうしたんですか?」
「ん〜?いつもAにしてることを再現してる」
こんなこと、私は初めてされたし、こんなに甘えたような声も初めて聞いた。
「A!玉森くんとこんなことしてるの?」
「え・・っと・・・」
「毎日いちゃついてるよな?真野が想像してる100倍は深〜〜い関係だよな」
いや、別にたいして深くはない。
だけど頭に血が上っているお姉ちゃんは、玉森さんの挑発をまともに受け止っている。
「Aを弄ばないで」
「お姉ちゃん、もういい・・
「大事にする」
「え?」
「大事にしてる」
お姉ちゃんが理不尽に決めた門限までに、ちゃんと帰れと玉森さんは言う。
私が好きな時に玉森さんに会いに行けるように、合鍵だってくれた。
玉森さんは私のこと、ちゃんと大事にしてくれている。
「お姉ちゃん、私はちゃんと大事にされてる。本当だよ?」
年の離れた妹のことを、お姉ちゃんが心配してくれてるのはわかってる。
私だって心配なんかかけたくないけど、だけど、玉森さんとのことは譲れない。
「真野」
「・・何?」
「心配すんな」
お姉ちゃんはそれ以上、何も言わなかった。
多分少しは、私たちのことを認めてくれたんだって、そう思う。
1573人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にかみつば(プロフ) - 北山くんのお話を優先して読んでたのですが、こちらも読んでみたらとても面白くてハマりました。三上先生の登場で更に面白い展開になってきて続きが楽しみです。いつも素敵なお話を作ってくださり、公開してくださりありがとうございます。 (2020年7月17日 16時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - marumarusubasubさん» marumaruさんは、もしかして横尾担様でしょうか?もしそうなら一緒です〜\(^^)/こちらが終わったら、書きかけの横尾さんのお話に取り組みたいと思ってます。いくつかお話をかかえてないと頑張れないので、未完がたくさんあるのがたまに傷な私です笑(*´-`)頑張ります★ (2019年9月16日 8時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
marumarusubasub(プロフ) - レスありがとうございます。嬉しいです。すごく読みやすく、特に横尾さんのお話大好きです。個人的に横尾さんのお話熱望ですm(_ _)mこれからも楽しみにしています! (2019年9月14日 20時) (レス) id: 7cd9d44213 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 本当に( ;∀;)やっとだったのに。設定的に30年近くかけて、初めて人を好きになったのに。。という、やりきれない気持ちになりました(自分で書いておきながら笑)。皆さんが願ってくださるラストになればいいなと思いながら(私も先は知らないのです)更新がんばります★ (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - わわかさん» わわわわ(*´-`)私の書いたお話にかわいさを感じてくださってるなんて〜(*^-^*)嬉しいな♪ちょっと今の展開は穏やかではありませんが、ほんわかじんわりなお話に戻れるように苦しい場面を乗り越えたいと思いますp(^^)q (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ