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「あ、恋人だー」
マンションの前で玉森さんの帰りを待っていると、仕事帰りの玉森さんが、私を見つけてそう言った。
「・・・恋人って呼ばないでください」
「何してんの?待ち伏せ?怖」
「怖くないです!私、玉森さんの連絡先知らないから」
「そうだっけ?」
「そうです」
玉森さんの後について、私も部屋の中に入る。
私を特に構うこともなく、玉森さんはスーツを脱いで、冷蔵庫からビールを取り出した。
「お前も飲む」
「いらないです」
「あ、そう」
それから彼は配線を繋いで、私をほったらかしにしてゲームを始める。
「・・・あの」
「ん?」
「聞かないんですか?」
「何を?」
「何しにきたの?・・とか」
「何も用がないのに会いに来るのが恋人なんじゃないの?」
私を振り返ることもせず、当たり前のように玉森さんはそう言った。
「・・・そっか」
「そうなんじゃないですか?」
玉森さんのどこが好きなのか問われても、何て答えていいかわからなかったけど、私は彼のこういうところが好きなんだと思う。
大切なことを、さらっと伝えてくれる、玉森さんのこういうところが。
「泊まってく?」
「・・・あ、そのことなんですけど。私、門限が22時になって、外泊禁止になっちゃいました」
「真野?」
「・・・はい。お姉ちゃん、何故か玉森さんを敵視してて・・」
「誰彼構わず遊んでたからな〜」
「え?」
「大学生なんてそんなもんじゃない?真野は俺のそういうチャラチャラしてる時期を知ってるから」
「私は今大学生ですけど、真面目な恋愛しかしてないし、今だって、真面目に玉森さんが好きです」
「真面目に好きって何だよ」
「・・だから、玉森さんだけってことです」
「それが真面目なの?」
「はい」
「ふーん。じゃあ、俺も真面目に、君のことが好きですよ?」
ほら、またさらって大切なこと言った・・。
「ゲームしながら言わないでください!」
「俺は真面目にゲームのことも愛してるから」
「私のことは好きで、ゲームのことは愛してるんですか?!」
玉森さんはコントローラーを置いて、私のことを振り返る。
「愛してる」
「・・え?」
「ゲームをな!」
「何なんですか?!」
「門限までに帰れよ〜」
やっぱり玉森さんを攻略するのは、一筋縄ではいかない。
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にかみつば(プロフ) - 北山くんのお話を優先して読んでたのですが、こちらも読んでみたらとても面白くてハマりました。三上先生の登場で更に面白い展開になってきて続きが楽しみです。いつも素敵なお話を作ってくださり、公開してくださりありがとうございます。 (2020年7月17日 16時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - marumarusubasubさん» marumaruさんは、もしかして横尾担様でしょうか?もしそうなら一緒です〜\(^^)/こちらが終わったら、書きかけの横尾さんのお話に取り組みたいと思ってます。いくつかお話をかかえてないと頑張れないので、未完がたくさんあるのがたまに傷な私です笑(*´-`)頑張ります★ (2019年9月16日 8時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
marumarusubasub(プロフ) - レスありがとうございます。嬉しいです。すごく読みやすく、特に横尾さんのお話大好きです。個人的に横尾さんのお話熱望ですm(_ _)mこれからも楽しみにしています! (2019年9月14日 20時) (レス) id: 7cd9d44213 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 本当に( ;∀;)やっとだったのに。設定的に30年近くかけて、初めて人を好きになったのに。。という、やりきれない気持ちになりました(自分で書いておきながら笑)。皆さんが願ってくださるラストになればいいなと思いながら(私も先は知らないのです)更新がんばります★ (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - わわかさん» わわわわ(*´-`)私の書いたお話にかわいさを感じてくださってるなんて〜(*^-^*)嬉しいな♪ちょっと今の展開は穏やかではありませんが、ほんわかじんわりなお話に戻れるように苦しい場面を乗り越えたいと思いますp(^^)q (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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