45 (玉森くん) ページ45
「玉森さん」
リビングのドアを少しだけ開けて、Aが俺を呼んだ。
「ん?」
「ドライヤーって、ありますか?見つけられなくて」
「あぁ」
洗面台の扉を開けて、ドライヤーを取り出す。
「鏡が扉になってるんですね。知らなかった」
「乾かしてやろうか?」
「そんな・・自分でやります」
「いいから」
Aの手を引いて、リビングのソファに座らせる。
余裕のない自分の為だ。
少しでもAに触れておこうっていうカッコ悪い作戦。
「誰かに髪を乾かしてもらうのって気持ちいいですね」
「そう?」
「気持ちよくて寝ちゃいそう」
「寝てもいいよ?」
「やだ」
「お前が寝ちゃいそうって言ったんだろ」
俺が持ってる色白の肌とかサラサラの髪質は、"女の子みたい"ってみんなからよく言われたけど、やっぱ違う。
本物の女の子とは、全然違う。
「よし、乾いた」
「ありがとうございます。私、髪乾かすの面倒くさくて大嫌いなのに、玉森さんに乾かしてもらってる時間、ずっと幸せでした」
「大袈裟」
「だって本当にそう思ったんだもん。・・・ずっと覚えておきますね。玉森さんに髪を乾かしてもらったこと」
「別に覚えとかなくていいよ」
「どうして?」
「そんなに嬉しかったんなら、またやったげる」
Aは俺の顔をじっと見つめて、それからやっぱり目を潤ませた。
「今日は涙もろいんだね」
「・・・やだ。どうしたんだろう。緊張してるのかな」
指先で目尻を拭う、Aの身体を抱きしめる。
「大丈夫だよ。緊張してんの、お前だけじゃないから」
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にかみつば(プロフ) - 北山くんのお話を優先して読んでたのですが、こちらも読んでみたらとても面白くてハマりました。三上先生の登場で更に面白い展開になってきて続きが楽しみです。いつも素敵なお話を作ってくださり、公開してくださりありがとうございます。 (2020年7月17日 16時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - marumarusubasubさん» marumaruさんは、もしかして横尾担様でしょうか?もしそうなら一緒です〜\(^^)/こちらが終わったら、書きかけの横尾さんのお話に取り組みたいと思ってます。いくつかお話をかかえてないと頑張れないので、未完がたくさんあるのがたまに傷な私です笑(*´-`)頑張ります★ (2019年9月16日 8時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
marumarusubasub(プロフ) - レスありがとうございます。嬉しいです。すごく読みやすく、特に横尾さんのお話大好きです。個人的に横尾さんのお話熱望ですm(_ _)mこれからも楽しみにしています! (2019年9月14日 20時) (レス) id: 7cd9d44213 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 本当に( ;∀;)やっとだったのに。設定的に30年近くかけて、初めて人を好きになったのに。。という、やりきれない気持ちになりました(自分で書いておきながら笑)。皆さんが願ってくださるラストになればいいなと思いながら(私も先は知らないのです)更新がんばります★ (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - わわかさん» わわわわ(*´-`)私の書いたお話にかわいさを感じてくださってるなんて〜(*^-^*)嬉しいな♪ちょっと今の展開は穏やかではありませんが、ほんわかじんわりなお話に戻れるように苦しい場面を乗り越えたいと思いますp(^^)q (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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