綿菓子と香辛料

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「ねぇ、本当にこの道で合ってる？間違ってない？」



アワアワとそう尋ねる私に、宮田さんは「大丈夫だよ」って微笑んだ。




すごく、嫌な予感がする。



今から行く場所に、私は行ってはいけない気がする。




"私、明日バイト休みなんですけど"



"あ、俺仕事"




唐突に、昨日の玉森さんとの会話を思い出す。



そうだ。



今日、玉森さんは休日出勤してるんだ。



彼の職場は女子校で、制服は今時珍しい古風なデザインのセーラー服。




そう、さっき私の横を通って行った女の子が着ていたのと同じやつ。




「着いたよ！」




宮田さんはそう言って、軽やかに校門をくぐった。




「・・ここ、玉森さんの職場じゃないですか！」




「そうだよ。見ての通り、今日は文化祭なんだって」




「文化祭なんだってじゃないですよ！職場に押し掛けちゃダメでしょ？！」




「何で？一般解放してんだよ？懐かしいじゃん。何か買お？」




全く悪びれる様子のない姉夫婦は、手を繋いで人混みの中に紛れていく。



このまま帰ろう。玉森さんに見つかったら、きっとこっぴどく叱られる。




そう頭ではわかってるのに、私は職場の、社会人の玉森さんの姿を見てみたい衝動に駆られてしまう。





「こんなにたくさん人がいるならバレないよね？」





祈るような気持ちで校門をくぐる。




玉森さんのクラスは、何のお店を出してるんだろう。




そんな話を私は聞かせてもらってないし、今日の"休日出勤"が文化祭だということも知らなかった。



私よりいくつか年下の女の子たちは、年下のはずなのに何だか大人っぽい。




こんなキラキラな女の子たちに囲まれて、玉森さんはどんな顔して教壇に立っているんだろう。




見てみたいな。




真面目な顔して、常識人ぶって、"先生"をしている玉森さんのこと。






私が知らない玉森さんの顔は、あと、いくつあるだろう。

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