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第二話『動き出す気持ち』 ページ6

大学を卒業して、私は、お菓子メーカーに就職した。


今日から1ヶ月間の新入社員研修が始まる。




緊張しながら指定された席に座って、辺りを見渡す。



試験会場で見かけた人が数人いて、話したこともないのに、一方的な親近感が湧いた。




「資料を配りますので、後ろに回してください」



今日の研修の講師が、そう言って紙の束を配る。




・・・何か、既視感。




窓際の一番後ろの席。




あの頃、私の指定席はいつだって玉森くんの後ろの席だった。




「はい、どーぞ」




目の前に差し出された紙の束。



私の前に座っている人の横顔を見て、私は思わず口元を押さえた。




だってそうしないと、驚きのあまり大声を出してしまいそうだったから。



資料を受け取らない私に気づいて、その人はゆっくりと私の方を振り返る。




目が合った瞬間、彼の両目が大きく見開かれた。




「・・・委員長?」





その呼び方が、その声が、やっぱり彼が彼であることを証明してしまう。




「委員長・・でしょ?」





「・・・・玉森くん?」





「そうだよ」





笑い方、全然変わらない。




あの頃の玉森くんの笑い方だ。





気の利いたことなんか一つも言えなくて、あの頃と同じように、ただ、玉森くんの背中を見つめることしかできない。







もう、寝たりしないんだね。



ちゃんと、大人になってる。





当たり前だけど、玉森くんにはもう、お世話係りなんていらない。

第二話『動き出す気持ち』→←第一話『18歳・卒業の日』



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マキ(プロフ) - かのんさん» うわーん( ;∀;)嬉しいです!ありふれたありきたりな話しか書けませんが、好きだと言ってもらえてすごーーく嬉しいです(*^^*) (2021年4月17日 13時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - もう、本当に本当に大好きです!マキさんの作品、本当に大好きです!! (2021年4月16日 19時) (レス) id: 46e739e0e0 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - eiennianatadakeさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)私の書いたもので少しでも心が温まってくださったのなら、こんなに嬉しいことはありません(*^^*) (2021年4月15日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
eiennianatadake(プロフ) - とても心が温かくなるようなお話でした!展開にハラハラしたり泣けちゃったり次回のお話も楽しみにしています! (2021年3月4日 3時) (レス) id: 69ceef1236 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - umiさん» このお話を好きになっていただけて嬉しいです!玉森くんのドラマが始まる前に書き終えたんですが、もうドラマも終盤ですね!時間が経つのが早くてびっくりしてます笑! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2020年12月24日 1時

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