第十話『いちばん大切なもの』 ページ47
「どうしたの?!」
驚いてドアを開けた私を見て、玉森くんは笑う。
「すごい勢いだねー。びっくりしちゃったよ」
「びっくりしたのはこっちだよ!」
「あれ?すっぴん?いつもと少しだけ違うね」
「やだ・・ちょっと待って!お化粧してくる」
「別にいいよ。気にしないで?」
お化粧なんてしなくても、信じられないくらい綺麗な玉森くん。
この敗北感は、何だろう。
もう、どうでもよくなって、私はすっぴんのまま玉森くんに尋ねる。
「・・そんなことより、どうしたの?急用?」
「うん」
「え?何?」
「ここじゃなんだから、家の中に入ってもいい?」
「・・・・そんなに深刻な話なの?」
「深刻だよ?すっごく」
本当に深刻そうに玉森くんが頷くから、私は少しだけ散らかったキッチンを思い返しながら、玉森くんを部屋の中に入れた。
「ご飯作ってたの?」
「・・・うん。それより深刻な話って・・・」
すごく不安な気持ちに駆られている私に向かって、玉森くんは穏やかに微笑みかける。
「はい、これ」
「え?」
差し出された保冷バックを、恐る恐る受けとる。
「・・何?」
「開けてみて?」
玉森くんに促されるまま、私は保冷バックを開けた。
「お弁当?」
そこに入っていたのは大きめのお弁当箱で、どうして玉森くんがお弁当を私にくれるのか、そもそも玉森くんが私の部屋にいるのはなぜなのか、全然わからなくて、見当もつかなくて、私はお弁当を持ったまた、玉森くんを見つめることしかできない。
「・・見つめないでよ。恥ずかしいから」
「恥ずかしいなんて、少しも思ってないでしょう?ちゃんと説明してよ、このお弁当は何?ちゃんと言葉にしてよ、玉森くんの考えてること、私にはわかんないよ」
気まぐれに私の心をかきみだして、いつの間にかいなくなっている。
近づいたと思った5秒後には、あなたは遠い場所にいた。
今日もそうなんでしょう?
こんなに近くにいるのに、次に私が瞬きをした後、あなたはいなくなっているんでしょう?
第十話『いちばん大切なもの』→←第十話『いちばん大切なもの』
925人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マキ(プロフ) - かのんさん» うわーん( ;∀;)嬉しいです!ありふれたありきたりな話しか書けませんが、好きだと言ってもらえてすごーーく嬉しいです(*^^*) (2021年4月17日 13時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - もう、本当に本当に大好きです!マキさんの作品、本当に大好きです!! (2021年4月16日 19時) (レス) id: 46e739e0e0 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - eiennianatadakeさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)私の書いたもので少しでも心が温まってくださったのなら、こんなに嬉しいことはありません(*^^*) (2021年4月15日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
eiennianatadake(プロフ) - とても心が温かくなるようなお話でした!展開にハラハラしたり泣けちゃったり次回のお話も楽しみにしています! (2021年3月4日 3時) (レス) id: 69ceef1236 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - umiさん» このお話を好きになっていただけて嬉しいです!玉森くんのドラマが始まる前に書き終えたんですが、もうドラマも終盤ですね!時間が経つのが早くてびっくりしてます笑! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ