第九話『恋』(玉森くん) ページ41
沙弥の手から、アルバムが滑り落ちる。
俺と栗原が写ったページが、バタンと音を立てて閉じた。
「いちばん大切なもの?」
「うん。そう書いてあった」
「栗原さんだったの?裕太にとっていちばん大切な人は」
「・・・高校生の時、俺はけっこう問題のある生徒で、反抗的とかそういうんじゃないんだけど、無気力だったんだよね、すごく。担任もお手上げで、最終的に、学級委員だった栗原に、俺のこと押し付けたんだ」
「どういう意味?」
「ずっと側にいて、”出席日数が危ない”とか、”これ以上赤点を取ったらやばい”とか、”寝すぎ”だとか”玉森くんの偏差値で行ける大学はここ”だとか、俺が卒業するために助けてくれたし、進路を決めるのも手伝ってくれた。あの時、栗原がいなかったらどうなってたんだろうって、今でも時々考える」
「だから大切だったってこと?栗原さんがいなきゃ、学校生活がままならなかったから」
「あの時の俺には、境界線がわからなかったんだ。・・・わからなかったっていうのは嘘だな。わからないふりをしてたんだと思う」
「何を?」
「栗原が大切なのは、俺を助けてくれるからなのか、彼女を好きだと思っているからなのか」
恋のその先にあるものが俺には全然見えなくて、自分の未来すら不明瞭で、そんな俺が、誰かを本気で好きになるなんて無理なんだと思ってた。
だけど、無意識に閉じ込めたあの時の気持ちは、行き場をなくして、溢れ出そうとしている。
「・・・・私のこと、好きじゃないの?」
みるみるうちに、沙弥の瞳が涙でいっぱいになる。
今の瞬間だって思ってる。
沙弥を傷つけたくないし、沙弥を泣かしたりしたくない。
・・・・だけど、限界なんだ。
心は一つしかなくて、
一つの心では、一人の人しか、想えないから。
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マキ(プロフ) - かのんさん» うわーん( ;∀;)嬉しいです!ありふれたありきたりな話しか書けませんが、好きだと言ってもらえてすごーーく嬉しいです(*^^*) (2021年4月17日 13時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - もう、本当に本当に大好きです!マキさんの作品、本当に大好きです!! (2021年4月16日 19時) (レス) id: 46e739e0e0 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - eiennianatadakeさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)私の書いたもので少しでも心が温まってくださったのなら、こんなに嬉しいことはありません(*^^*) (2021年4月15日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
eiennianatadake(プロフ) - とても心が温かくなるようなお話でした!展開にハラハラしたり泣けちゃったり次回のお話も楽しみにしています! (2021年3月4日 3時) (レス) id: 69ceef1236 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - umiさん» このお話を好きになっていただけて嬉しいです!玉森くんのドラマが始まる前に書き終えたんですが、もうドラマも終盤ですね!時間が経つのが早くてびっくりしてます笑! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
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