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第七話『私を好きな人。私の好きな人』 ページ32

就業時間の間中、横尾さんはいつもの横尾さんだった。


あまりに普通のその態度に、私は謝るタイミングを完全に失った。



「今日はソワソワして落ち着かないんだね」



「え?」



「横尾さんと何かあったの?」



玉森くんが、パソコンに目を向けたままそう尋ねる。



「・・どうして?」




「さっきからチラチラ横尾さんのこと見てるから」



「そんなことない」




「そう?」



「・・うん」



「てっきり告白でもされたのかと思った」



「見てたの?!」



「やっぱりされたんだ。鎌かけただけなのに」



「・・・鎌なんかかけないでよ」




単純な私は、こうやって玉森くんのトラップにすぐ引っ掛かってしまう。




「横尾さんと付き合ったら、毎日怒られてそうだよね、栗原」



「・・・勝手に決めつけないで」



「泣かされちゃうんじゃない?」



「横尾さんに怒られたくらいで泣かないよ」



「ふーん。小言は3分に一回で、掃除したあとのテレビ台のホコリの有無を毎日確かめられるかもしれない」




「お姑さんなのかな?」



「ややこしそうだね」



「玉森くんだって充分ややこしそうだよ」




「でもさ・・・・」




「ん?」




「でも、横尾さんは幸せにしてくれそうだよ。栗原のこと」



「・・・・え?」



「栗原にはお世話になりっぱなしだし、祈ってんだよ、俺だって。栗原の幸せ」







目尻を下げて、口角を上げる。





ゆっくり、





ゆっくり。





私が恋をした玉森くんの笑顔で、玉森くんは私の幸せを祈る。





「・・・・・・勝手祈らないで」




「ごめん」






シュンとする玉森くんの横顔は、高校生の、あの頃の玉森くんのままだった。

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マキ(プロフ) - かのんさん» うわーん( ;∀;)嬉しいです!ありふれたありきたりな話しか書けませんが、好きだと言ってもらえてすごーーく嬉しいです(*^^*) (2021年4月17日 13時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - もう、本当に本当に大好きです!マキさんの作品、本当に大好きです!! (2021年4月16日 19時) (レス) id: 46e739e0e0 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - eiennianatadakeさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)私の書いたもので少しでも心が温まってくださったのなら、こんなに嬉しいことはありません(*^^*) (2021年4月15日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
eiennianatadake(プロフ) - とても心が温かくなるようなお話でした!展開にハラハラしたり泣けちゃったり次回のお話も楽しみにしています! (2021年3月4日 3時) (レス) id: 69ceef1236 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - umiさん» このお話を好きになっていただけて嬉しいです!玉森くんのドラマが始まる前に書き終えたんですが、もうドラマも終盤ですね!時間が経つのが早くてびっくりしてます笑! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2020年12月24日 1時

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