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第四話『温かいポトフと冷製トマトスープ』 ページ16

「玉森!栗原!」



横尾さんの叱責は、毎日のように繰り返される。


私は相変わらず怯えているけど、玉森くんは全然平気そう。



「今日も元気だなぁ、横尾さんは」



「玉森くんは怒られるの怖くないの?」



「怖いよ。震えてるでしょ?同情してよ」



「怖くないんだね」




玉森くんは、変なところで無駄に度胸がある。


だから、私と玉森くんの組み合わせは案外バランス取れてるんじゃないかって、他の先輩社員にそう言われた。




お昼休みの時間になって、私はコンビニで買ったサラダやパンを取り出す。



玉森くんは、吉岡さんが作った美味しそうなお弁当を広げた。




「昨日も食ってなかった?そのパン」



「え?食べてた?」



「覚えてないの?ヤバいんじゃない?」



「毎日くたくたで、ご飯のことにまで頭が回らないんだよね」



「栗原ってけっこう抜けてるよね。高校の頃は、しっかり者なんだと思ってた」



「しっかり者なんかじゃないよ」



「知ってる。つーか最近知った」



「幻滅した?」



「何で?」



「しっかり者じゃなかったから」



「面白かった」



「え?」



「委員長なんて呼ばれてたくせに、あだ名負けしてんじゃんって」



「委員長って呼んでたの、玉森くんだけだったよ」



「あれ?」



「もう、本当にテキトー」



「ごめんな」



「え?」



「俺がそんなあだ名で呼んでたから、しっかり者を演じなきゃなんなかったのかなって」



「・・・別に、そんなこと思ってなかった」



「そう?」



「うん」



「栗原」



「何?」



「もう大丈夫だから。栗原はしっかり者なんかじゃないって、俺はちゃんと知ってるから」



「・・・玉森くん?」




「だから、そんなくたくたになるまで頑張るなよ」




ヤバい。




不覚にも、泣いてしまいそう。




今泣いたら、涙と一緒に玉森くんへの気持ちも溢れだしてしまいそうで、私は必死で手の甲をつねった。



現実、ちゃんと見なきゃ。




あんなに綺麗なお弁当、私は作れないでしょう?

第四話『温かいポトフと冷製トマトスープ』→←第三話『鬼上司と子犬のワルツ』



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マキ(プロフ) - かのんさん» うわーん( ;∀;)嬉しいです!ありふれたありきたりな話しか書けませんが、好きだと言ってもらえてすごーーく嬉しいです(*^^*) (2021年4月17日 13時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - もう、本当に本当に大好きです!マキさんの作品、本当に大好きです!! (2021年4月16日 19時) (レス) id: 46e739e0e0 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - eiennianatadakeさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)私の書いたもので少しでも心が温まってくださったのなら、こんなに嬉しいことはありません(*^^*) (2021年4月15日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
eiennianatadake(プロフ) - とても心が温かくなるようなお話でした!展開にハラハラしたり泣けちゃったり次回のお話も楽しみにしています! (2021年3月4日 3時) (レス) id: 69ceef1236 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - umiさん» このお話を好きになっていただけて嬉しいです!玉森くんのドラマが始まる前に書き終えたんですが、もうドラマも終盤ですね!時間が経つのが早くてびっくりしてます笑! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2020年12月24日 1時

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