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第三話『鬼上司と子犬のワルツ』 ページ11

「玉森!栗原!ちょっと来い!」



「あ〜またぁ?うるさいよね、あの人」



「玉森くん、聞こえちゃうから静かにして」





新入社員研修が終わって、私と玉森くんは、同じ男性社員から業務指導を受けることになった。



その人はかなり厳しい人で、私と玉森くんは、毎日のように、文字通り、ご指導を受けまくっている。




「見てよ、あの顔。般若じゃん。もしかしてお面かぶってる?」


 

「お願いだからやめて。聞こえちゃう!」




どんなに怒られようと、玉森くんはどこ吹く風で、飄々とした態度を崩さない。



だけど私は怖い。



般若のお面を被ってるかもしれない先輩社員に、私は本気でビビっている。




「・・・横尾さん、私たち、何か間違ってましたか?」




「見てみろ、これ」




投げ出された資料は、赤ペンで大部分が修正されていた。




「うわぁ、赤ペン先生じゃん」




「あぁ?」




「玉森くん!」





般若に睨み付けられても、玉森くんはニコニコと笑っている。




もう、私には二人とも怖い。




「お前、俺のことなめてるよな」



「いえ、僕は潔癖症なので」



「だからそういうとこが・・



「よ・・横尾さんすみません!今すぐ訂正します。ね?玉森くんも急いで仕上げたいよね?」



資料と玉森くんの腕を掴んで、私は横尾さんに頭を下げる。



「すぐに再提出します!」




まだ朝の10時なのに、私は疲労困憊だ。




「ねぇ、栗原」



「何?」



「何か懐かしいね」



「え?」



「また俺のお世話係りになったの?」




「なってない。玉森くんのお世話係りは横尾さんでしょ?」




「やだよ。あんな般若」



「失礼なことばっか言わないの」



「だって本当のことだもん」




まるで子どもみたい。



彼女の前の玉森くんも、きっとこんな感じなんだろう。



「玉森くん」



「ん?」



「訂正されてるとこ、ほとんど玉森くんが作ったとこだよ」



「何でだろう、栗原の声だけ聞こえない」



「玉森くん!」




場違いなほど、柔らかく微笑む玉森くん。



今日もうまく、丸め込まれた。

第三話『鬼上司と子犬のワルツ』→←第二話『動き出す気持ち』



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マキ(プロフ) - かのんさん» うわーん( ;∀;)嬉しいです!ありふれたありきたりな話しか書けませんが、好きだと言ってもらえてすごーーく嬉しいです(*^^*) (2021年4月17日 13時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - もう、本当に本当に大好きです!マキさんの作品、本当に大好きです!! (2021年4月16日 19時) (レス) id: 46e739e0e0 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - eiennianatadakeさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)私の書いたもので少しでも心が温まってくださったのなら、こんなに嬉しいことはありません(*^^*) (2021年4月15日 16時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
eiennianatadake(プロフ) - とても心が温かくなるようなお話でした!展開にハラハラしたり泣けちゃったり次回のお話も楽しみにしています! (2021年3月4日 3時) (レス) id: 69ceef1236 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - umiさん» このお話を好きになっていただけて嬉しいです!玉森くんのドラマが始まる前に書き終えたんですが、もうドラマも終盤ですね!時間が経つのが早くてびっくりしてます笑! (2021年3月3日 0時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2020年12月24日 1時

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