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episode1 『俺の制服を持つ係』 ページ1

それは、新学期が始まったばかりの、4月の中旬だった。



昼休みに校庭の横を通りかかった私は、突然大声で呼び止められた。




「ねぇ!!ねぇってば!!」




「・・・私?」




「そう!同じクラスだよな!」





「・・・うん」





友達とのサッカーを中断して、彼は私に近づいてくる。




私の名前さえ知らないらしい彼のことを、私はちゃんと知っている。




「・・私に何か用?北山くん」





「これ、持っててくんない?」




「え?」





差し出されたのは制服のブレザー。




戸惑う私の腕に、北山くんはお構いなしにブレザーを持たせる。





「あの・・





「持ってて。サッカー終わるまで。ブレザー着てるとあっちーんだ!」





棒立ちの私と、校庭を駆け回る北山くん。





・・楽しそう。




高校生も、昼休みにサッカーとかやるんだ。


小学生の昼休みみたい。




私は階段に座って、ぼーっと北山くんの姿を眺める。




クラスでも、休み時間ごとに男子で固まって、最低な下ネタとかくだらない冗談を言い合っている。



女の子の友達も多い方。



『みっくん』って呼ばれているのを、何度か聞いた。




「・・がとう」




「え?!」




「制服、ありがとう」




いつの間にかサッカーは終わっていて、目の前に北山くんがいた。




私は慌てて立ち上がって、ブレザーを北山くんに返す。




「どーも」




「・・いえ」




「あのさ、明日から俺の制服を持つ係になってよ」




「え?」




「昼休みにここに来て、俺のブレザー持ってて?サッカー終わるまで」



「毎日?」



「毎日」




「教室に置いてくればいいんじゃない?最初から」




「は?」



「え?」




「にっぶー!!鈍すぎだよ、中村さん」




北山くんはそう言って盛大に顔をしかめる。




「・・・名前」




「ん?」




「私の名前知ってたんだ」




「そりゃー知ってるでしょー」




「・・同じクラスだもんね」






「好きだからだよ」






一瞬の躊躇もなく、北山くんはキッパリと言い放つ。




「・・好き?」




「うん」




「私を?」




「君を」





私を見下ろして、得意気に笑うその顔に、ひどく胸が高鳴った。




「・・わ・・私は何代目の・・北山くんの制服を持つ係・・ですか?」





「初代!」





二人で、顔を見合わせて笑う。





北山くんに決められた『係』を、私はきちんと全うしようと誓った。 (END)

episode2 『香辛料が足りない』→



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マキ(プロフ) - さっこさん» 連投すごーく嬉しいですよ(*^^*)更新したお話に反応もらえると、読んでくださる人がどう思われているのかがわかって励みになるんです\(^^)/自分で書いているから、それが面白いかどうなのかは自分ではわからないので!いつもありがとうございます!そして移行します笑 (2020年10月30日 2時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
さっこ(プロフ) - 連投になってしまうから控えようと思うのに、我慢できません…!1話更新されたら、また初めから読み返しちゃって…そしてまた泣くっていう無限ループに陥っています…情緒が不安定です(笑)辛い…けど続きが読みたい…(笑)マキさんの書くお話は期待しかありません! (2020年10月30日 1時) (レス) id: 522c851c21 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - さっこさん» 新しい北山くんのお話も読んで下さって嬉しいです!タイトルは色んな含みをもたせてこれに決めました。熱血で愛情深い北山くんの姿を少しでも描ければと思っております(*^^*) (2020年10月29日 19時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
さっこ(プロフ) - 2話分で号泣する私がいます(笑)海ちゃん、ちゃんといい子に育ってるのはお姉ちゃんを見てるからだよー( ; ; )と主人公に伝えたいです!つい、お節介おばさんになってしまう…(笑)何があっても私は北山くんを信じています、タイトルに救いの希望を持ってます…! (2020年10月29日 0時) (レス) id: 522c851c21 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ナナさん» 暖かいお言葉、ありがとうございます(*^^*)好きだと言ってくださる方だけに、読んでもらえたらなぁと思っています(^^) (2020年10月26日 21時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年5月23日 22時

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