透き通る

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「何か悩みごとがあるの？」
「クラスで嫌なことでもあった？」



課外授業が終わった後、私は水城先生に呼び出されていた。



「・・・ないです」




「本当に？今日も何か変だったし、進学先も具体的に決めてないの澤木さんだけよ？ちゃんと真剣に考えてる？」





「・・・ごめんなさい」





「怒ってるんじゃないの。心配してるのよ？」





水城先生が、長い睫毛に縁取られた綺麗な目で、私の顔を覗き込む。





水城先生は優しいから、本当に私のことを心配してくれているんだと思う。





「・・・何もないです。本当に」





「そう？・・何かあったらいつでも相談してね？」





水城先生はやっと安心したように「もう帰っていいわよ」って笑った。





私は立ち上がって、談話室の扉を開ける。




私を見送る先生に、「失礼します」って、そう言って帰るはずだった。






「・・先生」




「何？」




「K大にします」





「え？」





「私、K大受験します」





突然そう言った私に、先生は一瞬面食らったみたいだった。





「K大？・・あ、私もK大だったからびっくりして」





・・・やっぱり。





「・・・北山先生もですよね？」





「え？」





「北山先生もK大だったって聞いたことあります」





「・・・あぁ、そうなの。北山先生はサッカー部で、私はマネージャーしてたんだけど、この学校で再会してびっくりしちゃった」





さっきから、強く握っている掌がジンジンと痛む。





よくわかんないけど・・うまくせつめいできないけど、みっくんと水城先生は、私が思っているよりずっと、親密な関係なのかもしれない。





「澤木さん？」




「・・・あっ、帰ります。さようなら」





頭を下げるのもそこそこに、私は談話室の扉を閉めた。






胸が、ざわざわする。







みっくんと水城先生は、ちょうどいい。





年齢も背格好も何もかも。





私の方がずっと側にいるのに、どうして私はいつまでも、みっくんとちょうどいい私になれないんだろう。

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