47 (北山先生) ページ47
卒業式は、滞りなく終了した。
なんだか呆気なくて、ぼんやりと卒業生が保護者と帰っていく後ろ姿を眺める。
Aはもう、恭子ちゃんと一緒に帰ってしまっただろうか。
「北山先生〜!」
「何っすか?」
「外の掲示物、剥がしてきて!窓に貼ってあるやつ」
「また俺?」
うんざりした顔を教頭に向けても「早く早く」って急かされる始末。
渋々立ち上がって、職員室を出た。
「寒っっ」
生憎の曇り空。
俺は、明日からもここにいて、Aは、新しい場所に行く。
「届きますか?」
窓ガラスに貼ってある掲示物を剥がそうとしていると、背後から嫌味な声が聞こえた。
「あ?」
「俺がやりましょうか?」
「届くし!お前はさっさと帰れよ!」
横尾は俺を無視して、手際よく貼られた紙を剥がしていく。
「先生」
「何だよ」
「俺んちの近所に、10歳くらい年の差のあるおじいちゃんとおばあちゃん住んでて・・・」
「はぁ?何の話だよ」
「それで、今はもう、どっちがじいちゃんでどっちがばあちゃんなのかあんまわかんなくて」
「だから、何の話・・
「年齢なんて、そんなもんかなって」
「・・え?」
「どうでもよくなる日がきますよ。先生と澤木の年齢差なんて」
「お前、Aと付き合ってんじゃないのか?」
「何でそんな勘違いしたのかわかんないですけど、それを信じこむなんて、先生って澤木以上にバカなんですね」
「・・バカじゃねーし!」
背の高い横尾を見上げる形になって、俺は何だか悔しくなる。
「バカじゃないなら、ちゃんと澤木に伝えてあげてください」
「・・・何を?」
「そんなこと、自分で考えてくださいよ」
冷めた視線で俺を見下ろす横尾。
「お前本当に18かよ」
「先生は本当に30過ぎてるんですか?」
剥がした紙を俺に押し付けて、横尾はそのまま帰っていく。
年齢なんて関係ない。
みんなそれぞれに、いろんな気持ちを抱えて生きている。
横尾のAへの気持ちは、きっと、俺にだって負けないくらい透明な想いだったはずだ。
「横尾!!ありがとな!!」
声を張り上げる俺を、横尾は嫌そうに振り返る。
「うるさいですよ!」
一番大切な人に、俺が伝えられることは何だろう。
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マキ(プロフ) - 青黄赤緑紫LOVEさん» 大切な想い出を共有させていたただき、ありがとうございます。かき氷のシロップの全部がけ、北山くんと横尾くんの対比を明確にしたくて描いたシーンでした。私の思いついたシーンが誰かの想い出をくすぐることがあるなんて、なんだかジーンとしてしまいました(;-;) (2021年12月19日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちはるさん» お返事が随分遅くなってしまいさました。すみません!横尾担からの北山担のちはるさんの為に作ったようなお話ですね笑!私も二人とも大好きです(*^^*) (2021年12月19日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかみつばさん» コメントに気づかず、長い時間が経ってしまっていました。すみません!『透き通る』という題名なので、登場人物たちの気持ちをキレイだと言っていただけて嬉しかったです(*^^*) (2021年12月19日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
青黄赤緑紫LOVE(プロフ) - 氷・レモン・氷、メロン・氷・ブルーハワイ、氷・最後にイチゴ・練乳でした。 最初はイチゴ練乳だから美味しかったのを覚えています。ブルーハワイの途中から味が混ざり独特な味がし、二人して吹き出した事を懐かしく思います。思い出させてくれて有難う御座います。 (2021年12月18日 21時) (レス) id: 3c812bd8e4 (このIDを非表示/違反報告)
青黄赤緑紫LOVE(プロフ) - 先日は、パスワード有難う御座います。 家事の合間に拝読させていただきました。かき氷のシロップ全部かけ…故主人と最期の夏祭りのかき氷、シロップ全部かけした事を思い出しました。私が買ったかき氷屋さんのは、氷とシロップを重ねて層にするもので下から (2021年12月18日 21時) (レス) id: 3c812bd8e4 (このIDを非表示/違反報告)
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