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私が産まれた時、みっくんはすでに中学生だった。
一人っ子のみっくんは、まるで自分の妹が産まれたかのように、それはそれは喜んでくれたらしい。
私が幼稚園に入園する頃、みっくんは高校3年生だったし、私が小学校に入学する頃には、みっくんは二十歳を越えていた。
みっくんは私のことを可愛がってくれた。すごくすごく可愛がってくれた。
妹みたいに、妹のように、妹さながらに・・・
違う。
どんなに比喩を重ねても、自分が虚しくなるだけだ。
みっくんにとって、私は『妹みたい』なんかじゃなくて、妹そのものだった。
14歳の年の差。
誰がどうみても離れすぎている。
加えて、今年の春、隣町の高校に勤めていたみっくんは、私が通っている高校に赴任してきた。
嬉しくなんてなかった。
だって私は、高校を受験するとき、絶対にみっくんがいない学校にするって決めていたから。
私以外の人を、みっくんが心配したり、可愛がったり、励ましたりすることを直視できるには、私はやっぱり幼かった。
全部私だけがいい。
そんな独占欲が、私を更に苦しめる。
「みっくん何か飲んでる。可愛いーー」
窓から身を乗り出すようにして、クラスの女の子たちが騒いでいる。
30歳を越えているようには見えない童顔や、みっくんのフランクな感じが、女子生徒の人気に繋がっていた。
そうなるってわかってた。
みっくんのこと、みんな放って置かないだろうなって、そんなことはわかってた。
そして私には、必要以上に冷たくするであろうことも。
「みっくーん!!」
数人の女の子たちが、冷やかすようにグラウンドに向かって叫ぶ。
みっくんはそれに気づいて、しっしって、右手で追い払うようなジェスチャーをした。
反応をもらった彼女たちは、嬉しそうな嬌声を上げる。
一瞬、みっくんと目が合った。
"す・き"
口の動きがわからない程度に呟く。
みっくんは眩しそうに目を細めて、そのまま私に背中を向けた。
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マキ(プロフ) - 青黄赤緑紫LOVEさん» 大切な想い出を共有させていたただき、ありがとうございます。かき氷のシロップの全部がけ、北山くんと横尾くんの対比を明確にしたくて描いたシーンでした。私の思いついたシーンが誰かの想い出をくすぐることがあるなんて、なんだかジーンとしてしまいました(;-;) (2021年12月19日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちはるさん» お返事が随分遅くなってしまいさました。すみません!横尾担からの北山担のちはるさんの為に作ったようなお話ですね笑!私も二人とも大好きです(*^^*) (2021年12月19日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかみつばさん» コメントに気づかず、長い時間が経ってしまっていました。すみません!『透き通る』という題名なので、登場人物たちの気持ちをキレイだと言っていただけて嬉しかったです(*^^*) (2021年12月19日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
青黄赤緑紫LOVE(プロフ) - 氷・レモン・氷、メロン・氷・ブルーハワイ、氷・最後にイチゴ・練乳でした。 最初はイチゴ練乳だから美味しかったのを覚えています。ブルーハワイの途中から味が混ざり独特な味がし、二人して吹き出した事を懐かしく思います。思い出させてくれて有難う御座います。 (2021年12月18日 21時) (レス) id: 3c812bd8e4 (このIDを非表示/違反報告)
青黄赤緑紫LOVE(プロフ) - 先日は、パスワード有難う御座います。 家事の合間に拝読させていただきました。かき氷のシロップ全部かけ…故主人と最期の夏祭りのかき氷、シロップ全部かけした事を思い出しました。私が買ったかき氷屋さんのは、氷とシロップを重ねて層にするもので下から (2021年12月18日 21時) (レス) id: 3c812bd8e4 (このIDを非表示/違反報告)
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