透き通る

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横尾渉、横尾渉、横尾渉・・・。




横尾くんの名前を何度も頭の中で反芻したけど、やっぱり私は彼のことを思い出せなかった。




気づいたら私はマンションのエレベーターの前に立っていて、考えごとをしていると意識が飛んでしまう自分が、少し怖くなった。




エレベーターのボタンを押して、1階に降りてくるのを待つ。




やっと降りてきたエレベーターが開いた瞬間、後ろから青葉台ボーイズがドヤドヤと私を追い越してエレベーターのドアを閉めた。




「ちょっと！」




エレベーターが閉まる瞬間、抗議しようとする私に、青葉台ボーイズは私をバカにしたように変顔をする。




「Aがトロいから悪いんだよ！」





捨て台詞と共に、エレベーターが閉まる。





ほんっっとにムカつく！




閉じてしまったエレベーターを前に地団駄を踏んだ時、薄い記憶が、一気に鮮明になって私の中に甦った。






「あ！青葉台ボーイズだ！」






青いユニフォームを着て、いつも私に意地悪を言っていた男の子。




クラスの男の子の中でも、小柄な方だったのに、いつの間にあんなに背が伸びたんだろう。





小学生の頃の横尾くんと、今の横尾くんの姿はまるで別人で、そのあまりの違いに、私は自分の記憶が信じられなくなる。






私も横尾くんみたいに、別人みたいに変身できたらよかったのに。






私はいつまでも幼いままだ。






外見も中身も、何一つ変わらない。





私も変身したい。





澤木Aじゃない、みっくんの知らない誰かになれば、みっくんは私のことを見てくれるかもしれない。





女性として、異性として、恋愛対象として。







・・・何て哀しいんだろう。







私じゃない誰かにならないと、みっくんは私を見てくれないなんて。





本末転倒にも、程がある。

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