36 (北山先生) ページ36
「先輩って、昔からモテてましたよね?」
「え?」
「大学生の頃から、彼女がいない時なんてなかった」
「・・だからチャラいって言いたいんだろ〜?実際よく言われたし」
「ううん」
「嘘つけ」
「私は、ただ羨ましかったです。隣の女子大の女の子とか、同じ学部の先輩とか。北山先輩の彼女になれる女の子たちが、私はずっと羨ましかった」
水城がそんな感情を俺に向けているなんて、夢にも思わなかった。
目に見えない淡い想いを、俺はどれだけ傷付けてきただろう。
「"好き"って何か、わかりましたか?」
"好きって、何だっけ?"
最低の返事を投げつけた俺に、水城がやり直しをさせてくれる。
あまりの情けなさに、水城の顔を見ることさえ躊躇われるけれど、彼女の想いに向き合おうって、そう決めたんだ。
「・・・逢いたい・・こと」
水城が、黙ったまま頷く。
「心配すること」
「叱ること」
「うまいもん食った時に、食べさせたいなって思ったり、好きなケーキとかそういうの見つけたら、思わず買っちゃったりすること」
側にいて、君の未来を見たいと思うこと。
側にいて、君の未来にいたいと思うこと。
"みっくん"って呼ぶ君の隣に、立っていたいと願うこと。
「先輩?」
「・・あれ?・・何だ、これ」
大急ぎで、瞼をごしごしと擦る。
濡れた掌を、信じられない気持ちで眺めていた。
「・・好きな人が、いるんですね」
「え?」
「逢いたくて、心配したり叱っちゃったりする人が、先輩にはいるんでしょう?」
「・・水城」
「はい」
「・・・ごめん。水城とは付き合えない」
「好きな人が、いるんですか?」
「・・・いる」
この想いが、形を持つことは許されない。
伝えることは叶わなくて、伝えるべきではないこの気持ちは、哀しいくらい、俺の中にくっきりと存在している。
"みっくんの都合で、私は大人になったり子どもになったりするんだね"
泣いていたのに。
あいつがあんなに泣いていたのに、俺は、抱きしめることさえできなかった。
「・・・いつから、好きだったんだろう」
本当は・・・随分前から、君は子どもなんかじゃなかったんだ。
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マキ(プロフ) - 青黄赤緑紫LOVEさん» 大切な想い出を共有させていたただき、ありがとうございます。かき氷のシロップの全部がけ、北山くんと横尾くんの対比を明確にしたくて描いたシーンでした。私の思いついたシーンが誰かの想い出をくすぐることがあるなんて、なんだかジーンとしてしまいました(;-;) (2021年12月19日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちはるさん» お返事が随分遅くなってしまいさました。すみません!横尾担からの北山担のちはるさんの為に作ったようなお話ですね笑!私も二人とも大好きです(*^^*) (2021年12月19日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかみつばさん» コメントに気づかず、長い時間が経ってしまっていました。すみません!『透き通る』という題名なので、登場人物たちの気持ちをキレイだと言っていただけて嬉しかったです(*^^*) (2021年12月19日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
青黄赤緑紫LOVE(プロフ) - 氷・レモン・氷、メロン・氷・ブルーハワイ、氷・最後にイチゴ・練乳でした。 最初はイチゴ練乳だから美味しかったのを覚えています。ブルーハワイの途中から味が混ざり独特な味がし、二人して吹き出した事を懐かしく思います。思い出させてくれて有難う御座います。 (2021年12月18日 21時) (レス) id: 3c812bd8e4 (このIDを非表示/違反報告)
青黄赤緑紫LOVE(プロフ) - 先日は、パスワード有難う御座います。 家事の合間に拝読させていただきました。かき氷のシロップ全部かけ…故主人と最期の夏祭りのかき氷、シロップ全部かけした事を思い出しました。私が買ったかき氷屋さんのは、氷とシロップを重ねて層にするもので下から (2021年12月18日 21時) (レス) id: 3c812bd8e4 (このIDを非表示/違反報告)
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