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いくつかの君の話 ページ48

「ねぇ、お父さん。このお花の名前は何て言うの?」




「これ?・・レンゲ」





「これは?」





「シロツメクサ」






「じゃあ、これは?」






「ナズナ」






「え?私とおんなじ名前!」





3歳の娘が、目をキラキラさせて感嘆の声を上げた。






「そうだよ。なずなと一緒だね」





春の公園は、どこを見渡しても植物でいっぱいだった。





「なずなの名前はね、お父さんがつけたんだよ」




「本当?」




「お父さんもね、お母さんに教えてもらったんだ。この白い花をつけてるのが、ナズナって名前だってこと」





「だから、私のお名前はなずななの?」





「そうだよ。お父さんにとって、大事な想い出だから」





いくつかの君の話しか持たなかった俺は、いつの間にか、いくつもの君との想い出を娘に話すようになった。




なずなと血は繋がっていないけど、性格は俺に似てちょっぴり意地悪だ。






「ねぇ、なずなって雑草なの?」




「どうして?」





「宮っちがね、なずなのこと、雑草娘って呼ぶの」





「よし、今度あいつぶっ飛ばそう」





「もうぶっ飛ばしたよ?」




「え?」





「今度宮っちに、お馬さんになってもらうんだ〜」






・・・何ていうか、血は繋がってないのに血は争えない。





「ムチもつくるの」





「やめなさい」





「何で〜?」って不満な顔をする娘をなだめていると、遠くの方からAが走ってくる姿が見えた。





「あ、お母さんだ」




「ねえ!どうして二人で黙って出ていくの?!びっくりするじゃない!」




息を切らして、Aは開口一番そう言った。





「なずな、お散歩行くって言ってないの?」




「だってお父さんが言ったと思ってたもん」





「俺も、なずなが言ったと思ってた」





「信じられない!探したんだから!」





一人で怒っているAに、なずなが手作りの花束を握らせる。





「どーぞ」





「・・・ありがとう」





「どーいたしまして」





「・・前にも、こんなことあったね」





「え?」





「裕太さん、くれたでしょ?タンポポとナズナの花束」




「あげたね」





「不思議だね。裕太さんとなずなちゃん、どんどん似てくる」




駆け回っているなずなの背中を、Aが潤んだ目で見つめている。




「親子ですから」





そう言って、Aの手をそっと握った。



想い出の数が、また一つ増えた。

番外編・『宮っちとなずなちゃん』→←47



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マキ(プロフ) - たまりんさん» うわぁ!随分前に書いたお話でしたが、読んでいただけて嬉しい(*^^*)しかも苦手なジャンルなのに、このお話がたまりんさんの大好きなお話になれたのなら、当時頑張って書いたことが報われます! (2020年6月4日 19時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 一番大好き (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 読んでみたら (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - でも、 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - こんにちは。マキさんが書く玉ちゃんが大好きです!でも、正直こういう複雑な身の上の女性とのお話は苦手で、今まで避けてきました。マキさんにパスワードをおしえていただき、一気に他の作品は読んだけど、やっぱりこちらのお話は最後に残ってしまいました。 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年2月21日 1時

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