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「あ、本当にいた」
待ち合わせた場所に、渡辺くんはちゃんと来ていた。
「何だよ、本当にって」
「だって、すぐ約束破るから」
渡辺くんはバツの悪そうな顔で「ごめん」って頭を下げる。
「荷物持つよ」
「・・いい」
「A？」
「私、渡辺くんとは一緒に行かない」
「何で？やっぱ許せない？俺のこと」
「許すとか許さないとか、そういうことじゃないの。渡辺くんがどうしようもない人なのは最初からわかってたから」
「じゃあ何で？」
浮気疑惑も、度重なる転職も、私を大切にしてくれなかったことも、全部許してこられたのは、渡辺くんのことが好きだったから。
「私、渡辺くんのこと、もう好きじゃない」
「え？」
「・・気持ちが100パーセントだったときも、1パーセントだった時もある。だけど、渡辺くんを好きだってことに変わりはなかった」
「ダメなとこ、全部なおすから」
「・・・ゼロなの。・・・渡辺くんへの気持ち、ゼロになっちゃった」
あの時。
玉森さんに抱きしめられた時。
自分の気持ちを確信してしまった。
この温かい腕の中にずっとずっと包まれていたいと、本気で願ってしまった。
叶わないのに。
叶うわけないのに、私は、玉森さんのことを好きになってしまった。
「・・・あの男の人のとこに行くの？一緒に暮らしてた人」
「行かない・・・・行けない」
玉森さんは、これからきっと、素敵な恋をするだろう。
厄介事をたくさん抱えた、私みたいな女ではなく、玉森さんによく似合う、誰から見ても素敵な女性と、幸せな恋をするだろう。
「渡辺くんに、さよならを言いに来たの」
「・・・うん」
「さよならを言うのは大切なことだって、教えてもらったから」
「誰に？」
「私の、好きな人に」
玉森さんは、私に"バイバイ"って言ってくれた。
さよならは、あきらめの言葉。
お別れしなくちゃいけない時間や、空間や、出会った人に、さよならを言って、それがなくなってしまうことをあきらめる。
自分の日常から、いなくなってしまうことに蹴りをつける。
前に進むために、言わなければいけない、希望の言葉。
「渡辺くん、最後に、会いに来てくれてありがとう。私、あなたにやっと、さよならが言える」
さよなら。
私の、好きだった人。
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マキ(プロフ) - たまりんさん» うわぁ！随分前に書いたお話でしたが、読んでいただけて嬉しい(*^^*)しかも苦手なジャンルなのに、このお話がたまりんさんの大好きなお話になれたのなら、当時頑張って書いたことが報われます！ (2020年6月4日 19時) (
レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 一番大好き (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 読んでみたら (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - でも、 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - こんにちは。マキさんが書く玉ちゃんが大好きです！でも、正直こういう複雑な身の上の女性とのお話は苦手で、今まで避けてきました。マキさんにパスワードをおしえていただき、一気に他の作品は読んだけど、やっぱりこちらのお話は最後に残ってしまいました。 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
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