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5 (玉森くん) ページ5

「あ、水しかないや。水、飲みます?」



「いえ、大丈夫です」




ほんの数時間前まで全然知らなかった人が、今、俺の部屋にいて、ソファに座っている。




何だかすごく不思議な気持ちだ。




「・・腹減ったな。倉谷さんは?何も食べてないでしょ?」




「食欲ないから」




「でも、少しくらい食べないと」




もう一度冷蔵庫をのぞいてみたけど、大したものは入っていない。




「俺、何か買ってき・・・




「作りましょうか?」




「え?」




「ご飯、お礼に。迷惑かけたし。冷蔵庫、見てもいいですか?」




「・・・あぁ、でも、本当になんもなくて」





倉谷さんは冷蔵庫を開けると、テキパキと使えそうな食材を取り出していく。




「得意なんです。節約料理みたいなの。渡辺くん、働いてなくて、私が食べさせてたから」




「え?」




「本当にダメな人で、どうしようもない人で、でも、子どもができたって言ったら、喜んでくれて、働くからって言ってくれたんです。仕事見つけるために、東京行くねって。後から呼ぶからって。それが3週間前で・・」




「そうなんだ」




「でも、全然連絡取れなくなって、焦ってたら手紙来て。それに書いてあったのが、ここの住所でした」





「ふーん」




「ネットとか見て、適当にこのマンションの住所書いたんでしょうね。本当、最低」





倉谷さんが苦しそうに笑うから、俺は何だか悲しくなった。





俺には何の関係もない話なのに、倉谷さんに、そんな顔をしないで欲しいと思った。





「よかったね」




「え?」




「渡辺くん、喜んでくれて」




「・・・」




「赤ちゃんがいるってわかった時、渡辺くん、喜んでくれてよかったね」





俺を見つめる倉谷さんの目に、みるみるうちに溢れる涙。






泣けばいいと思う。






悲しいときは泣けばいい。





我慢することは、全然偉くない。






悲しいときは、特に。

6→←4 (玉森くん)



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マキ(プロフ) - たまりんさん» うわぁ!随分前に書いたお話でしたが、読んでいただけて嬉しい(*^^*)しかも苦手なジャンルなのに、このお話がたまりんさんの大好きなお話になれたのなら、当時頑張って書いたことが報われます! (2020年6月4日 19時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 一番大好き (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 読んでみたら (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - でも、 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - こんにちは。マキさんが書く玉ちゃんが大好きです!でも、正直こういう複雑な身の上の女性とのお話は苦手で、今まで避けてきました。マキさんにパスワードをおしえていただき、一気に他の作品は読んだけど、やっぱりこちらのお話は最後に残ってしまいました。 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年2月21日 1時

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