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40 (玉森くん) ページ40

「ただいま」



玄関の灯りはついていたけど、倉谷さんは出迎えてはくれなかった。



「倉谷さん?」




ドアを開けると、倉谷さんはキッチンに立っていて、俺を振り返ることなく、「お帰りなさい」って言った。





「何でこっち向かないの?」




「・・今、手が離せなくて」





明らかに様子がおかしい倉谷さんに、何だか胸騒ぎがした。





「ねぇ、倉谷さ・・




無理矢理振り向かせた倉谷さんの目は真っ赤で、俺は言葉を失ってしまう。





「・・・ご飯、すぐできますから」






「倉谷さん」





「・・・早く、着替えて来て下さい」





「何があったの?」










本当は、半分わかっていた。








「・・・・玉森さん」






君が、俺に背中を向けて"お帰りなさい"って言った瞬間から。





「・・・どうした?」






この日が来ることは、最初から決まっていたんだ。






「・・・今日、渡辺くんに会いました」







「・・・そうなんだ」







「渡辺くん、私とやり直したいって。仕事も、ちゃんと見つけてくれてました」






「・・うん」






「玉森さん」





「ん?」





「帰ります。渡辺くんのところに」





目に涙をいっぱい溜めて、それでも精一杯の笑顔で、倉谷さんはそう言った。





「・・うん」









人生の、ほんの一瞬の倉谷さんとの時間。





とるに足らないくらい、短い二人暮らし。







だけど、それで充分だったんだよ。









俺が、君を好きになるには、それだけの時間で充分だったんだ。







「倉谷さん」






「・・・はい」






「ご飯、食べようか」









今日も一緒に、ご飯を食べよう。








眠る前に、おやすみを言おう。







いつも通り、この部屋で、今日もちゃんと二人暮らしをしよう。









だって・・






そうしないと・・








君を失う悲しみに、俺は耐えられそうもないから。

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マキ(プロフ) - たまりんさん» うわぁ!随分前に書いたお話でしたが、読んでいただけて嬉しい(*^^*)しかも苦手なジャンルなのに、このお話がたまりんさんの大好きなお話になれたのなら、当時頑張って書いたことが報われます! (2020年6月4日 19時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 一番大好き (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 読んでみたら (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - でも、 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - こんにちは。マキさんが書く玉ちゃんが大好きです!でも、正直こういう複雑な身の上の女性とのお話は苦手で、今まで避けてきました。マキさんにパスワードをおしえていただき、一気に他の作品は読んだけど、やっぱりこちらのお話は最後に残ってしまいました。 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年2月21日 1時

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