いくつかの君の話

35 (宮田くん) ページ35

今月の同期会に玉森の姿はなかった。


一人香山さんを待つ俺は、すでに胃が痛い。




「ごめん！帰り際に仕事頼まれて・・・玉森くんもまだなんだ。よかっ・・・




「来ないよ」




「え？」





「今日は来ない」





「何で？」





「倉谷さん、体調悪いみたいで」





俺の言葉に、香山さんは溜め息をつく。





「また倉谷さん？」





「まぁ、しょうがないじゃん。妊婦さんだし、玉が心配する気持ちもわかるでしょ？」





「ねぇ、いつになったら迎えにくるの？彼氏」






「俺に聞かれても」





「どうにかしてよ！」





「そんな無茶な」





香山さんは、イライラを隠そうともせず、俺に八つ当たりをする。





「香山さん」




「何？」




「俺に八つ当たりするみたいに、玉の前でももっと本当の自分を見せればよかったのに」





「何言ってるの？」





「何度もチャンスはあったでしょ？玉に気持ちを伝えるチャンス。何で言わなかったの？」




「そんなのなかった。まだ、気持ちを伝えるなんてそんな・・」





「嘘だ。結局振られるのが怖かったんでしょ？そんなんで、玉を繋ぎ止められるわけな・・





「さっきから何なの？！どうしてそんなことばっかり言うの？」





なーんで俺が香山さんを泣かせなきゃいけないんだろう。




俺ってけっこうお節介なのかな。







GO!GO!宮田！


頑張れ宮田！




妄想のチアガールたちに励まされて、俺はもう一度香山さんと向き合った。





帰ったら、ご褒美に徹夜でアニメ鑑賞しよう。

36 (宮田くん)→←34 (玉森くん)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す