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34 (玉森くん) ページ34

家に帰り着くと、倉谷さんがソファに横たわっていて、俺に気がつくと慌てて起き上がった。




「お帰りなさい!」






「どうしたの?具合悪い?」






「いえ、大丈夫です」






「ちゃんと言って?」







倉谷さんは一瞬迷って、「ちょっと熱っぽくて」って、自分のおでこを触った。






「部屋で寝なよ」





「でも、ご飯・・・





「ご飯なんか、どうにでもなるよ」





「だって、ちゃんと家事しなきゃ、私がこの家にいる意味ないです!」






「倉谷さん?」






「家事もできないくらいなら、私なんか・・この家にいちゃダメです」





「どうした?負のオーラがすごいんだけど」





「だって・・





「だってもへちまもありません。病気の人は寝てくださーい」





「玉森さ・・





ジム通いが効を奏して、俺は倉谷さんを軽々と抱えることができた。




「お姫様抱っこしたの初めてだ」





「重いから!玉森さん、下ろして?」





俺の腕の中で倉谷さんが暴れる。





「危ないだろ。赤ちゃん、びっくりするよ?」





大人しくなった倉谷さんを、そのまま彼女の部屋まで運ぶ。





「なんか食べたいものある?」





拗ねた子どもみたいに、倉谷さんは首を振った。





「玉森さんにご飯なんか作れないでしょ?って、思ってる?」





コクンと頷く倉谷さん。






「バカにしやがってー」





倉谷さんのほっぺをつねろうとしたら、指先が彼女の熱に触れた。





「ほら、熱いじゃん」





あまり体温の高くない俺の手のひらで、倉谷さんの頬を包み込む。





「冷たくて、気持ちいい」





そう言って小さく微笑む倉谷さんから、思わず目をそらした。







だって・・






だって、抱きしめてしまいそうになったから。






「玉森さん?」





「・・・早く寝なさい」





「・・・・はい」





「眠るまで、側にいるから」





倉谷さんが、静かに目を閉じる。






暗がりの中でも、彼女の寝顔ははっきりと見えた。








何でだろう。





泣いてしまいそうになった。

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マキ(プロフ) - たまりんさん» うわぁ!随分前に書いたお話でしたが、読んでいただけて嬉しい(*^^*)しかも苦手なジャンルなのに、このお話がたまりんさんの大好きなお話になれたのなら、当時頑張って書いたことが報われます! (2020年6月4日 19時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 一番大好き (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 読んでみたら (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - でも、 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - こんにちは。マキさんが書く玉ちゃんが大好きです!でも、正直こういう複雑な身の上の女性とのお話は苦手で、今まで避けてきました。マキさんにパスワードをおしえていただき、一気に他の作品は読んだけど、やっぱりこちらのお話は最後に残ってしまいました。 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年2月21日 1時

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