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19 (玉森くん) ページ19

釣りから帰ると、玄関に見覚えのないの靴が並んでいた。




「ただいま」




「玉ー、お帰りー!」




ご機嫌な様子の宮田が、うざったいほど大きく手を振る。




「何してんの?」




「歓迎会」




「誰の?」




「倉谷さん」





キッチンには香山と倉谷さんがいて、二人とも俺に気づくことなく、料理に夢中になっている。




「何作ってんの?」




二人の背中に尋ねると、「あ、玉森くん!」って、香山が声を弾ませた。




数秒遅れて、倉谷さんが俺の方を振り返る。




俺と目が合った瞬間、ほっとしたように、頬をゆるませた。





「おかえりなさい」




「ただいま」





待たせて悪かったなぁって思う。




よく知らない二人に囲まれて、心細かっただろうなぁって。





「玉、どこに行ってたの?」





「釣り」




「どこに行くとか何時に帰るとかさぁ、ちゃんと倉谷さんに言って行けよ」





「何で?」





「何でって、普通は言うだろ?」





「そういうもん?」





「そういうもんだろ。まったく、気が利かない男ってやだなー」





「お前に言われたくない」





どこに行くの?何時に帰るの?って、倉谷さんに一度も聞かれたことがないこと、今、気づいた。





「そういうの困るのよね。帰ってくる時間わかってないと、食事の準備とかね」





香山が野菜を刻みながら、独り言みたいに呟く。




倉谷さんは、何にも言わない。







恋人じゃないから、家族じゃないから、友達じゃないから・・







倉谷さんは、俺に、何にも言わない。






「倉谷さん」





「はい?」





「ごめん」





「え?」








恋人じゃない。





家族じゃない。





友達じゃない。








だけど、俺たちは一番近い場所にいる。






「倉谷さん。明日は友達と買いものに行く。ご飯は、家で食べる」






倉谷さんは、俺の言葉を不思議そうに聞いていたけど、一瞬考えた後、「はい」って、嬉しそうに頷いた。





俺はなんだか、満足だった。

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マキ(プロフ) - たまりんさん» うわぁ!随分前に書いたお話でしたが、読んでいただけて嬉しい(*^^*)しかも苦手なジャンルなのに、このお話がたまりんさんの大好きなお話になれたのなら、当時頑張って書いたことが報われます! (2020年6月4日 19時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 一番大好き (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 読んでみたら (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - でも、 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - こんにちは。マキさんが書く玉ちゃんが大好きです!でも、正直こういう複雑な身の上の女性とのお話は苦手で、今まで避けてきました。マキさんにパスワードをおしえていただき、一気に他の作品は読んだけど、やっぱりこちらのお話は最後に残ってしまいました。 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:マキ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年2月21日 1時

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