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「香山さん、帰ろ?」
宮田さんが、香山さんの背中を押して、玄関まで連れていく。
香山さんが全然抵抗しないのは、多分、傷ついているから。
「玉、また明日な!倉谷さんも、ごめんなさい。急に押し掛けて」
「いえ・・」
「じゃあ、おやすみなさい」
深々と頭を下げて、宮田さんは玄関のドアを閉めた。
「玉森さん・・」
「ん?」
「明日、お二人に会ったら、ちゃんと説明してあげてください。こんな正体不明の女が友達の家に転がり込んでるなんて・・・きっと、すごく心配してます」
「嫌」
「玉森さん!」
「俺、シャワー浴びてくるから」
「本当に、ごめんなさい」
「何が?」
「玉森さんの厚意に、すごく甘えてること」
「別に、君に厚意なんかかけてないよ。ただ部屋が余ってただけだし、掃除してもらえるし、ご飯も作ってもらえるし、もしかしたら俺の方が、君を利用してんのかもしれないよ?」
そう言って、玉森さんは笑った。
「どうする?俺がすげー悪いヤツだったら」
「そんなわけない」
「倉谷さんを、闇の組織に売り飛ばす計画練ってたり」
「闇の組織?」
「そう。怖い人たち」
大真面目な顔をして、玉森さんは子どもじみたことを言う。
「・・玉森さんは、怖くないですか?もしかしたら、私も怖い人たちの仲間かもしれない」
「少し怖いけど、諦める。見る目なかったなーって。君をここに置くこと、決めたのは俺だから。全然OK。闇の組織でもOK。美人局でもOK。誰も頼ることができない、孤独な妊婦さんでも」
「玉森さん・・」
「一応、誰も頼ることができない孤独な妊婦説を、俺は採用してるけど」
「・・・私も、孤独な妊婦をほっとけなかった優しい好青年説を採用してます」
「好青年だって。やったー」
全然嬉しくなさそうにそう言って、玉森さんはシャワーを浴びにリビングを出ていく。
玉森さんと話していると、不思議と心が軽くなる。
彼に励ましているつもりは少しもないのかもしれないけど、私は玉森さんに救われている。
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マキ(プロフ) - たまりんさん» うわぁ!随分前に書いたお話でしたが、読んでいただけて嬉しい(*^^*)しかも苦手なジャンルなのに、このお話がたまりんさんの大好きなお話になれたのなら、当時頑張って書いたことが報われます! (2020年6月4日 19時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 一番大好き (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - 読んでみたら (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - でも、 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - こんにちは。マキさんが書く玉ちゃんが大好きです!でも、正直こういう複雑な身の上の女性とのお話は苦手で、今まで避けてきました。マキさんにパスワードをおしえていただき、一気に他の作品は読んだけど、やっぱりこちらのお話は最後に残ってしまいました。 (2020年6月3日 11時) (レス) id: afad14c6fa (このIDを非表示/違反報告)
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